学園についた私を待っていたのは日向サンと林檎ちゃんだった。
「ご用件は?」
「頼みたいことがあってな」
応接室の椅子に座って出されたコーヒーに口をつける。
「なんですか?」
「今度、特別講師として学園に来て欲しいんだ」
「全生徒の前で講演をしてほしいの〜」
特別講師?
私が?
「スケジュールは礫にあわせる。頼めないか?」
「まぁ…無理ではないけど」
「助かるわ〜」
抱き着いてきた林檎ちゃんに苦笑しながら手帳を開く。
「あー…そういえば」
「なんだ?」
「Japan boysっていつだっけ?」
私の言葉に日向サンが首を傾げる。
「出るのか?」
「オファーは来てる。正式な返事は早乙女さんと話し合って明日出すんだけど。一応スケジュールに入れておかないと講師の件の日付も決めれないし」
「あぁ、そうだな…」
「たしか、このあたりよ〜」
抱き着いたままの林檎ちゃんがスケジュールの日付を指差す。
「ん、了解。じゃあ…講師の件はこれが終わってからでいいかな?」
「あぁ、大丈夫だ。悪いな」
平気と答えてから時計を確認する。
「このあと何かあるのか?」
「今日は蘭丸さんと嶺二さんが仕事上がり早いってメールきたから新曲の打ち合わせやることにしててさ」
「そうか。送ろうか?」
日向サンが車の鍵をくるりと回す。
「平気。蘭丸さんのマネさんが車で拾ってくれるって」
「相変わらず仲良しね〜」
「大切な人だし?じゃあ、そろそろ行くね」
林檎ちゃんから離れて鞄を掴む。
「あ、日向サン」
「どうした?」
「ちゃんとご飯食べてる?無理しちゃダメだからね」
それだけ言って、応接室を出るとタイミングよく電話が鳴る。
「もしもし」
『学園の前についたぞ』
「すぐ行く」
In応接室
「立派になったわね〜、礫君」
「そうだな」
礫が出て行ったドアを見つめて溜息をつく。
「作曲、歌、モデル、テレビ番組、ラジオのパーソナリティ、マスターコース総監督に、事務所の企画に会計…アイツ、体壊したりしねぇかな」
「またコラボ新曲だすみたいよ?…心配ね〜」
「立派になるのは嬉しいが、心配事が増えて胃がいてぇ…」
2人で顔を見合わせて、苦笑する。
「どんどん遠くなるわね〜」
「嬉しいような、哀しいような…だな」
「応援するしか…ないけどね」
「そうだな」
****
事務所の社長室には私とレン、日向サンそして早乙女さんがいる。
「ファッションショーに?」
レンが資料を見ながら呟く。
「イエースッ!!Mr.神宮寺レン、ユーを名指しで出演のオファーが来たのデース」
「仕事の幅を広げるいいチャンスだ。心して取り組めよ」
腕を組みながらそういう日向サンを横目にテーブルの資料に目を落とす。
「Japan Boys Collectionねぇ…」
「礫も出るのかい?」
レンが首を傾げる。
「その予定。あ、早乙女さんOKの連絡入れておいてもらえます?」
「もう入れてありマース」
「は?」
…いや、おかしいでしょ。
私が返事する前にOKするなよ…
レンは資料を持って部屋を出ていく。
「あ、レン!!」
「なんだい、礫?」
企画書を見たレンの表情が一瞬強張った。
多分原因は…メインスポンサーの欄にあった神宮寺グループの名前だろう。
「頑張ろうな、レン」
「あぁ…そうだね」
出ていくレンを見送って、手帳に日付を書き込む。
「聞いたか?例の、うたプリアワードにすでにノミネート確定だろうって噂されてる新人がいるって話」
「ライバルがいるのはいいんじゃない?」
手帳を閉じて、企画書に手を伸ばす。
「本物のアイドルになれるか、ST☆RISH見ものぜーよ」
「まぁ、なるようになるでしょ」
企画書に一応全て目を通して机に投げ捨てる。
そして、赤い手帳を開いた。
「これで、レンは大丈夫そうだね」
「なんでだ?」
「ん?俺のカン?」
七海もいるし問題ないでしょ…
多分。
「あ、日向サン。講師の件はJBCの翌週の月曜日でどう?」
「構わねぇけど…大丈夫そうか?」
「平気平気。あーあと、早乙女さん」
椅子に座ってクルクルと回っていた早乙女さんがぴたりと止まる。
「蘭丸さんと嶺二さんは新曲は順調だよ。カミュさんはセシルに構いっぱなしで時間が取れてない。藍は明日打ち合わせ予定」
「OKOKなのよ〜。頑張っちゃってくだサーイ」
「はいはい。じゃあ、寮に戻るから俺はこれで。詳細がわかったら連絡宜しく」
そう言って、所長室を出る。
「久々に落ち着いて作詞できそうだ」
湖の近くの木の上に上り作詞を進める。
「ん〜…ここは、もう少し…」
「礫?」
「ん?あ、翔?」
木の下から声が聞こえてその声の主を探す。
「下だよ、真下」
「あ、本当だ。どうしたの?」
ノートとペンを持ったまま下にジャンプして降りる。
「聞いたぜ?JBC、レンと一緒に出るんだろ?」
「まぁ、その予定。けどメインはレンだから俺はおまけ」
「どんだけ、豪華なおまけだよ」
翔が苦笑する。
「何書いてたんだ?」
「ん?これは…俺の大切な人達の詩かな…」
翔、聖川、音也の作詞作曲を終えた私が新しくは書き始めたレンの詩。
それに視線を落としてクスリと笑う。
「…また先輩達か?」
「あの人たちは半専属みたいなものだから違う。今回は別の依頼でね…渡せる日が楽しみなんだ」
私の言葉に翔の眉間に皺が寄る。
「誰だよ、それ」
「内緒。いつかわかるだろうし、楽しみにしててよ」
ノートを閉じて、翔に顔を近づける。
「な、何だよ…」
「最近、あからさますぎるよ?寂しいって表情」
「え?」
「じゃあね」
何か言おうとする翔を無視して、木の上に上がる。
「おい、礫!!?」
「聞こえないよ〜」
そんなやり取りをしながら、もう1度ノートにペンを走らせた。
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