体育館の外で整列する彼らを視界に入れながら部室からあるものを持ってくる。

「周りを固めるのは俺達じゃまだ弱い。悔しいけどな」
「おお〜流石主将!ちゃんとわかってるね〜」

校門に背中を預けた及川が笑う。

「なんだコラやんのかコラ」
「なんの用だっ」

坊主君と6番君が及川に突っ掛かる。

「そんなに邪険にしないでよ〜挨拶にきただけじゃ〜ん」
「及川、相変わらず勝手なことしてくれるね。片付けサボらないでよ」
「怒んないでよ寿サン。挨拶、挨拶〜」

影山が私を見て目を見開いた。

「次は最初から全開で戦ろうね。あ、そうそうサーブも磨いておくからね」

及川が5番君を見る。

「ツッキーばっか狙って、ズルい!!」

そばかすのある男の子が声を上げた。

「え?ズルいって言われてもな〜」
「スポーツなんて騙しあいでしょ?意地悪もズルいもない。最後に勝つのは意地が悪くてズルくて、どこまでも勝ちに貪欲な人だよ」
「ちょ、寿サン!!?」

及川が慌ててこちらを見る。

「彼が一方的に狙われた理由はレシーブが苦手だと見破られたから。…悪いのは出来ない彼で、それを隠せなかった彼だよ」
「まぁまぁ落ち着いて」
「及川を責めることは私が許さない」
「え?」

及川が固まった。

「悪いな、1年が」
「…いえ、こちらも口がすぎました」
「麗亜さん」

主将に頭を下げて、さっきの男の子にもごめんと呟く。
手に持ったものを5番君に渡そうとしたとき、名前を呼ばれる。
烏野のメンバーは呼んだ声の主に視線を向けた。

「久しいね、影山」
「お久しぶりです」

ぺこりと頭を下げた彼に微笑む。

「知り合いか?つーか、今更だけど誰?」

坊主頭の人がこちらを見る。

「青城マネ、寿麗亜です」
「中学時代に、俺のどんなトスでも取れたスパイカーです」
「「「「「え!!?」」」」」

全員は視線がこちらに向けられる。

「昔の話だよ」
「なんで、マネなんかしてるんですか。というより、なんでこんな学校にいるんですか?もっと女バレの強いところから推薦来てましたよね」

及川が心配そうにこちらを見る。

「あぁ、確かに来てたよ。けど、私はもうバレーはやってない」
「は?なんでですか!?」
「…影山。去年の最後の試合見たよ」

影山が息を詰まらせた。

「…コートで独りだったから、心配してたんだけどさ」
「質問に答えてください!!」

強い口調の影山を無視して言葉をつづけた。

「いい仲間に出会えたみたいだね。厳しくても頼りになる先輩と、君のトスを合わせるに値する相棒。まぁ6番の君はもっと技術つけないと合わせてもらう側のままだろうけど」

6番のちびっこがえっと固まる。

「主将さんは落ち着いてるし、レシーブの力はやっぱり経験から来るものかな。2番のWS君は冷静さには欠けるけどチームを精神面で支えることができるし、流れを変えれる力を持ってる。3番の君もプレーが安定してるし、多少ミスはあるけど正確なプレーだね。2年生かな?」
「ちょ、麗亜さん!!?」
「5番の君はあんまりやる気は見えないけど冷静だし技術もある。プレーを見る限り頭脳派かな?まぁ、レシーブは練習不足だね。6番の君はポテンシャルがある。その跳躍力は手に入れようとして手に入るものじゃない。まぁ、影山にボール運んで貰ってる内はまだまだかな」

勢い任せに喋って、影山を見る。
烏野のメンバーは驚いてる。

「君が壊れる前に、いい仲間が見つかって良かったよ」
「麗亜さん…」
「私は、出会う前に壊れた」

微笑みながら、私はそういった。

「君は私と一緒だった。コートの上ではいつも独り。孤高の王だった。王様と呼ばれた君と女帝と呼ばれた私。そっくりだと思わない?」
「女帝ってまさか…」

主将さんと隣に立つ泣きぼくろのある人が顔を見合わせる。

「中学生で日本代表に選ばれた…」
「そう。…私に似てたんだ、影山は。だから心配だった」
「麗亜さん、俺の質問に!!」

及川が私の手を掴む。

「麗亜チャン」
「…平気」
「嘘吐き…」

哀しそうな声に苦笑する。

「私の翼は折られ、引き裂かれた」

烏野の部員が動きを止める。

「それって…」
「私はもう、飛べないんだ」
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