「寿先輩。部活一緒に行きません?」
教室を出て立っていた彼に溜め息をつく。
「また、迎えに来てくれたんだ」
「危なそうなんで」
「信用されてないね」
「先輩だし…」
ここ最近毎日、迎えにくる国見。
彼のおかげで呼び出しはないけど…
「ここまで来るの面倒じゃない?」
「先輩に会えるから別に」
国見が微笑む。
あー、可愛い。
「ありがとう。部活行こうか」
国見と体育館に入ると及川がこちらに視線を寄越してすぐにそらす。
「ドリンクとタオルです」
「おー、サンキュー」
ドリンクの籠の横に座ってノートを開く。
「どうだ?新しいここは」
岩泉の言葉にペンをくるりと回してから口を開く。
「まぁまぁ。チームとしては悪くないよ。まぁ、個々のスキルにバラつきがあるのが残念だね」
コートに立っている及川を見る。
彼が何かするたびに上がる歓声。
「最近、荒れてるんだよね。及川のボール」
「そうか?」
「うん。なんか、悩んでて…イライラしてる。多分ね」
悩み事、なんてガラじゃないよね?
やっぱり、あれかな…
「わかんねー」
「そう?」
「お前らって相変わらずだよな」
岩泉が苦笑する。
「みんなの前じゃ仲良く見せないくせに、お互いを理解してる。本当は仲良いんじゃねぇの?」
「どーだろうね。お互い理解してるってのも、どうかわかんない。けどさ…一番近くでアイツの努力を見てきたから…アイツのバレーは誰よりも理解してるつもりだよ」
ノートを閉じて岩泉に視線を向ける。
「それにさ…信じてるんだよ、及川を」
私の言葉を聞いて、岩泉が目を見開いた。
「ん?」
「そんな顔、するんだな…お前」
「どんな顔だよ」
汚れたタオルと空のボトルを抱えて体育館を出る。
及川の努力は誰よりも近くで見てきた。
一緒に努力してきた。
一緒に…
「やっぱり、ダメかな…このままじゃ」
毎日私を迎えに来ていた国見が来なかった。
今日は委員会だったかな…そうえいば。
そう思いながら体育館に向かって歩いていると、聞き慣れた声が私を呼んだ。
「ちょっといいかしら」
「あぁ、いいよ」
彼女達に連れられて行ったのは滅多に使われない資料室。
「最近1年生のせいで、話できなかったわね」
「あぁ、そう言えばそうだね」
「そろそろ、やめてくれる気になったかしら?」
ドンッと部屋に押し込まれて、彼女達はドアの前に立つ。
「残念ながら、そうはいかないかな。可愛い1年もいるし」
「そう。残念ね…まぁ、いいわ。どうせ、貴女は今日で終わりよ」
嫌な笑みを浮かべて、ドアが閉められた。
あぁ、嫌な予感しかしない。
「少し、頭を冷やしなさい。」
「サボりだって、及川君に伝えてあげるね」
あぁ、やっぱり。
カチャンと鍵が閉まる音がした。
楽しそうな笑い声を聞きながら溜息をつく。
「こういう日に限って、携帯忘れたんだよね」
資料室の椅子に座って、部活のノートを出す。
「まぁ、時間は有効活用させて貰うけどね」
****
麗亜チャンが今日は来ていない。
濡れて来たとしてもこんなに遅くはならないのに…
「岩ちゃん、寿サンは?」
「俺もわかんねェ。いつも国見と来てるんだけどな…アイツも委員会らしくて」
なんだろう、嫌な予感しかしない。
「及川君!!」
名前もわからないクラスの女子が体育館の入り口で俺を手招きしてる。
「呼んでるぞ、及川」
「……うん」
笑顔を張り付けて、その子の所に行くと顔を紅くして俺の名前を呼んだ。
「さっき寿さんが帰ってたんだけど」
「え?」
「校門に男の人がいて、一緒にどっか行ったみたいだったよ」
男の人?
麗亜チャンがサボりってこと?
「そっか、ありがと〜」
「もしかして、サボり?」
「え?いや、違うと思うよ〜。多分国見が寿サンから伝言受けてると思うから」
「そ、そうなんだ。てっきり、サボってるんだと思った〜。いつも、やめたいっていってるもんね」
その子が周りの女子に言うと、周りの子も頷く。
「及川君の悪口とかも言ってるし」
「俺、寿サンに嫌われてるからサ。しょうがないよ〜」
「嫌じゃないの?」
「嫌じゃないよ。俺には、大切な子なんだよ〜。嫌われててもね」
悔しそうに顔をしかめたその子たちに、あぁこの子たちが麗羅チャンを傷つけてる子だって思った。
ねぇ、麗亜チャン。男の人って、元彼?
その人は俺達よりも、俺よりも…大事なの?
やっぱり、俺じゃダメなのかな〜
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