及川と帰って、家に着くと携帯が鳴る。

「メール?」

知らないアドレスからのメールを開くと月島蛍です、と書かれていた。

「月島?あぁ…タオルの子か…」

内容を見てみると明日の練習後に会えますか、というもの。
タオルを返したいって…律儀だな…
結構遅くなるけど平気?と返信を返すとすぐに返信が来た。

「部活が終わってから、駅…ね」

わかった、と返信して携帯を閉じる。

「及川もこれくらい律儀にならないかな」


次の日、上機嫌な及川と自主練をしてから駅に向かった。

「月島君」

駅の前に立つ彼に声をかけるとヘッドホンを外してからぺこりと頭を下げた。

「こんばんは、寿さん…でいいんでよね?」
「ん、そうだよ」
「わざわざ来てもらってすいません」
「こっちも、遅い時間に来て貰っちゃってごめんね」

大丈夫です、と彼が言う。

「これ、ありがとうございました。助かりました」
「律儀にありがとね」

紙袋にタオルが綺麗に畳まれて入ってる。
それを鞄の中にしまう。

「腕は平気だった?」
「まぁ、なんとか」
「よかった」

そう言って微笑むと目を逸らされた。


****


「おい、押すな!!バレるだろ!!?」
「ノヤっさん、うるさいぞ」
「龍もうるせぇ!!」

物陰から顔を覗かせる烏野の部員。

「ききき来ちゃ悪いよ」
「いいだろ、面白そうだし」
「寿さんに迷惑じゃない?」

東峰、澤村、菅原の3人が後輩を眺めながら笑う。

「ツッキィィィ」
「山口、うるせぇ。麗亜さん…なんで月島なんかと」
「付き合ってんのかなぁ〜」

山口、影山、日向の順で呟いた。

「おい、ノヤ!!寿さんと仲良いんだろ?恋愛事情知らねェのか?」
「知らん!!」
「威張るなよ」

呆れた声で澤村が呟いた。

「俺、寿さんのことよく知らないし…帰ってもいい?」
「ダメっすよ!1スガさん、気にならないんすか!!?気になりますよね、旭さん!?」
「え?あ、あぁうん…」

西谷に叫ばれて東峰がぎこちなく頷く。

「てか、スガさん俺に麗亜のこと沢山聞いてきたじゃないっすか!!」
「え?あ、いやそれはね…あの、あれ…」
「へぇ、スガがね…」

澤村がニヤリと笑うと菅原は慌てて目を逸らした。

「俺以外にも大地も旭もノヤも田中も影山だって気にしてただろ!!?」

菅原の言葉に日向が首を傾げながら問う。

「みんな寿さんが好きなんですか?」

その言葉にみんな一斉に目を逸らしたのだった。


****


月島君と話していると視線を感じてそちらを見る。

「…ねぇ、月島君」
「なんですか?」
「オレンジ色の髪した子って、珍しいよね」
「そうですね。烏野にはいますけど…」

物陰から覗くオレンジ色。
他にも黒も見え隠れする。

「突然どうしたんです?」
「あー…うん。今日ここに来ること、誰かに言った?」
「用事があるとは山口に言いました。…山口、に…あぁ…」

月島君が段々険しい顔になっていく。

「潰す」
「物騒なこと、言わないの。まぁ、ざっと見結構いるかな…」
「すいません、僕のせいで」
「あー、いいよ。気にしないで」

とは言ったものの…黙ってネタにされるのは嫌だな…
何か仕返しを、と思いながら伏せた瞳をあげると月島君とバッチリ目が合う。

「ねぇ、月島君」
「なんです、寿さん」
「今考えてること当ててあげようか?」
「僕も当てましょうか?」

2人で顔を見合わせてニヤリと笑う。

「「何か仕返しを」」

重なった声にクスリと笑う。

「最高だね、月島君」
「それはどうも」
「私と同じように捻くれてるし及川みたいにうるさくない。最高すぎる」
「寿さんには負けますよ」

飄々と言った彼に、私は微笑む。

「じゃあ、ちょっと騙しちゃおうか」

携帯を出してカメラモードにする。

「何する気ですか?」
「え?勘違いして焦ってる顔を撮ろうと思って」
「部長のそう言う顔、みたいっすね」
「あれ、奇遇だね。私も」

月島君の背の向こうに彼らが見えるように少し移動して、動画撮影を開始した携帯を持った手を肩に乗せて背伸びをする。

「やろうとしてることがわかりました」
「理解が早くて助かるよ」

首を傾けて、顔を近づける。
向こうから見たらキスしてるように見えるはずだ。

「月島君、背高いね」
「まぁ、そうですね」

その状態で話しながら、首の角度を何度か変える。

「どうですか?撮れました?」
「バッチリかな」

顔を離して、撮影した動画を見る。
そこに映る烏野の部員に私は笑うのを我慢できなかった。

「ヤバい、部長の顔最高」
「菅原さんもいいと思いますよ?」
「影山もね」

2人でクスクスと笑う。

「それ、送ってくれません?」
「いいよー、メールで送る」

昨日メールを貰った時に登録したアドレスに送ると月島君はニヤリと笑った。

「当分楽しめそうです」
「そうだね」

月島君が思い出したように私を呼ぶ。

「寿さん、彼氏とかに勘違いされないですか?」
「残念ながら、いないから平気」
「及川…さん…は?」
「あれは違う」

なら平気ですねと、いい笑顔で笑った月島君に自分にそっくりだなと心の中で思う。

「さてと、じゃあ…直接説教とするか」
「そうっすねぇ」

彼らのいる方に2人で歩いてこちらに背中を向けて頭を抱える夕と山口の後ろに立つ。
私たちに気づいた他のメンバーは顔を青くする。

「嘘だろ、麗亜が…麗亜が」
「ツッキーに彼女…寿さんが…彼女」

私は夕の、月島は山口の頭を片手で掴む。

「「(私/僕)が、何だって?」」
「「え?」」
「「いい度胸だね、(夕/山口)」」
「「ギャーーーッ!!!」」

月島君が山口の説教を続ける中私はさっさと夕を黙らせて、他のメンバーを見る。

「覚悟は…できてるよね?」

ニヤリと笑うとみんなの表情がみるみるうちに強張っていった。
そこにいたメンバーをシメ終えた私と月島は顔を見合わせる。

「下の名前蛍だったよね?蛍って呼んでいい?あれ、読み方ケイだよね?」
「そうですよ。好きに呼んでください。僕も麗亜さんでいいですか?」
「いいよ。蛍とはいい友達になれる気がする」
「奇遇ですね、僕もです」

((((((この2人は怖い……………))))))
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