部活が終わり、部員が帰った後一人部室に残る。
「金田一と国見は記憶にあるな…」
他にも見覚えのある顔はいくらかいる。
「麗亜チャン、何してるの?」
「推薦で入る新一年生」
「あぁ…」
向かい側に座った彼が頬杖をついて私を眺める。
2人になった時にだけ呼ばれる名前。
及川のこれだけは変わらない。
「なに?」
「最近冷たいよ、麗亜チャン」
「…疲れてるんだよ、どっかの誰かさんのせいで」
「俺じゃないよね?それ」
お前以外に誰がいると思うんだよ、コイツ…
「ねぇ、何かあったでしょ〜?」
「なんで?」
「そんな気がしただけ」
話ながらも動かしていたシャーペンをくるりと回す。
「3年が抜けて、チームの調子も悪くないと思うよ」
「え?」
「金田一も国見も良くできた奴だったと思うし。強くなるよ、このチーム」
くるり、くるりと回るシャーペンを及川は見つめる。
「勝つよ、絶対。それが麗亜チャンとの約束だから」
「約束、ね」
回していたシャーペンを止めて筆箱にしまう。
「終わり?」
「まぁ、今日はね。明日から映像見ながらやるけど」
「そっか。じゃあ一緒に帰ろっか」
彼がニコリと笑う。
「その顔、嫌い」
「え?ちょ、麗亜チャン!!?」
どんな嫌がらせだって、耐えてやる。
誰にも悟られずに。
それがマネージャーの仕事だから。
こいつらが万全の状態でバレーが出来るように。
そのためなら…
「ねぇ、及川」
「なぁに?」
「何があっても、前だけ見て」
「え?」
部室の電気を消して、鍵を閉める。
「たとえ、何がその瞳に映っても前だけ見て勝ち続けて」
「どうしたの?急に」
「それが、私からの最後のお願い」
及川は首を傾げる。
「勝つよ」
「…帰ろうか」
「そうだね」
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