「なんで及川の膝のサポーターって色違うの?」

部室の着替え中、ポツリと花巻が呟いた言葉にみんなが動きを止める。

「そういえば…」
「高校入ってから黒と白になったよな…」

部室にいたみんなの視線が俺の膝に向けられる。

「え、いや…突然どうしたの?マッキー」
「いや、なんか気になった」
「え〜…」

左膝に付けられた黒いサポーターと右膝に付けられた白いサポーター。

「どうせ、あれだろ。カッコつけ」
「違うよ!!?岩ちゃん、ひどい!!」
「じゃあなんだよ」

岩ちゃんの切り返しにふい、と視線を逸らす。

「なんか理由ありか…」
「気になるな…」

今部室には3年しかいない。
きっと言うまで返してはもらえない。
けど、言いたくはない。

「いや、あの…もう時間だしさ!!帰ろう?ね?」
「及川が言ったら帰るか」
「まっつんに賛成!!」

一足先に制服に着替えたまっつんが、ドアの前に立つ。

「さぁ、吐け。及川」
「いや…」
「つーか、よく3年もそのサポーターもつな」

岩ちゃんがじっと白いサポーターを見る。

「黒いのはちょくちょく買いにいってるよな?」
「う、うん…」
「白いのはずっと同じやつ?」
「まぁ…」

右膝のサポーターを撫でて、目を伏せる。

「あれか!!彼女からのプレゼント」

マッキーの言葉に2人は首を傾げた。

「及川は中学から寿に片思いだろ?」
「ちょ、まっつん!!なんで知ってるの!?」
「岩泉から聞いたけど」
「岩ちゃん!!!?」

平然としている岩ちゃんに駆け寄って肩を前後に揺らす。

「何で勝手に!!?」
「いや、別に隠すことじゃねぇだろ。お前が好きってバレバレだし」
「岩ちゃんの馬鹿…」

バレバレって…
麗亜チャンにもバレてるのかな…?
いや、それはないか…

「けど、モテモテの及川が中学から彼女なしって意外だよな」
「彼女いない歴は?」
「…年齢とイコール…」

ポツリと呟けば3人が顔を見合わせて笑う。

「べ、別にいいでしょ!!?」
「悪いとはいってないだろ。ただ、意外だよね…」
「マッキーうるさい!!」

サポーターから話がそれたのはよかったけど…

「寿って彼氏いんの?岩泉知ってるか?」
「中学の時はいたけど今はいない」
「ちょ、岩ちゃん!!?中学の頃の知ってたの!?」
「…お前、知らなかったの?」

驚く岩ちゃんにコクリと頷く。

「有名だったぞ。顔を見たやつはいなかったけど学校に迎えに来てたりしてたって。結構歳離れてたらしいけどな」
「…なんで俺だけ知らなかったんだろ…」
「さぁな…」

止めていた手を動かして着替えを再開する。

「寿って結構告白されてるよな?」
「呼び出しされてるのよく見る」
「いつ取られるかわかったもんじゃないな。寿って普通に美人だし」

そんなコト言われなくても分かってる。
麗亜チャンは綺麗だし、しっかりしてるし頭もいいし…
モテてるのも知ってる。

「告白しねぇの?」
「…全部終わるまではしない。…約束、まだ守ってないから」

麗亜チャンのために勝ち続けてない。
まだIHの舞台に麗亜ちゃんを連れて行ってない…

「変なところ律儀だよな、及川って」
「だって…俺が裏切らない限り裏切らないって…言ってくれたから麗亜チャンが…」
「寿ってスゲェカッコいいこと言うよな。てか、及川…麗亜チャンって言ったり寿サンって言ったり…なのなの?」

俺は慌てて口を塞ぐ。
部長という立場になって、公に二人で話すことが増えたから切り替えるのが難しいのだ。
去年まで、練習中に関わることはほとんどなかったし…

「いや、遅いだろ」
「2人の時だけは名前で呼んでたとか?」

小さく頷くとまた彼らが笑う。

「普通にいつも呼べばいいだろ」
「俺のファンの子に何されるかわからないから…」
「あぁ、それなら仕方ねェな。寿は結構巻き込まれてるし」

岩ちゃんの言葉に、また頷く。

「だから、2人の時だけ…だったんだけど」
「まぁ、俺達だしいいじゃん」
「…気を付ける」

麗亜チャンを傷つけるのはもう嫌だから…
部室にノックの音が聞こえてドアが開く。

「あれ、まだいたの?」
「まぁな。あ、そうだ…話逸れてたぞ。及川。そのサポーターの真相」

開いたドアを避けたまっつんの言葉に俺はピシリと動きを止める。

「ま、まっつん…あ、あの…」
「サポーターの真相って?」

首を傾げた##NMAE2##チャンに説明し始めるまっつん。
俺はタオルに顔を埋めて、背中を向ける。

「あぁ、左右が違う理由知りたかったんだ」
「知ってんのか?」
「あれ、岩泉も知らないの?あの白のサポーターは私が中学時代に使ってたやつだよ」

さらっと言ってのけた麗亜チャンに部室に沈黙が広がり、背中に視線を感じる。

「私と約束した時に、約束を忘れないように試合中に私が使ってた身につけられるものが欲しいって言われて…右膝用のサポーターあげたの」
「左は?」
「怪我した時に血まみれだよ」

クスクスと麗亜チャンが笑う声が聞こえる。

「へぇ…寿のサポーターなぁ…」
「そりゃ、言えないよなぁ」
「昔の…及川が必死でウケる」

馬鹿にするような声に顔が熱くなる。

「う、うるさい…」
「及川耳紅いぞー」
「まっつん!!」

タオルから顔を離して振り返れば麗亜チャンの姿が見えて、また動きを止める。

「よくまだもってるね。大切にしてくれてるってことなのかな?」
「う、うん…」
「そっか。ありがとね、及川。ほら…部室閉めるからみんな出て」

慌てて着替えを済ませて部室から出る。
今日は麗亜チャンの顔見れない…

「及川のサポーターにそんな秘密があったとはな」
「いいでしょ、もう!!」
「及川って寿のことになると余裕なさすぎ」

笑う彼らに顔を伏せる。

…約束の証拠が欲しかった。
まさか本当にくれるとは思ってなかったけど…

「及川、寿のこと送ってやれよ」
「1人じゃ危ないしな。じゃあ、俺達は帰るわ」

帰っていく3人に俺は小さく溜息をつく。
ひどい…

「あれ、及川?どうしたの?」
「あー…一緒に帰ろう?」
「ん、いいよ」

微笑んだ麗亜チャンに俺は慌てて視線を逸らした。
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