「もう1回見ておかないとな。烏野1年コンビのあの強烈な速攻」
「そうですね」
ジャージに身を包んだ私たちは体育館に入っていく。
「あれ、及川は?」
「エ゛…えーっと…」
目を逸らした彼に首を傾げる。
「外で他校の女子に捕まってます…」
溜息をついて岩泉に視線を向ける。
「岩泉頼んだ」
「お前は?」
「私はパース」
ボールを1つ渡すと黒い顔をして外に出ていった。
第一試合開始25分前。
観客席の1番前を陣取った。
「やっほー!トビオちゃん、チビちゃん。元気に変人コンビやってるー?」
「大王様っ…!」
やっぱり、大王様ってあだ名なんだー…
及川が騒いだせいで周りからの視線が集中する。
「あれっリベロがいるねぇ」
「なんかデカい奴も増えてんな…」
岩泉と及川の話を聞きながら柵にもたれ掛って眺めていると彼の視線がこちらに向いた。
「繋心ー」
「麗亜!!?」
目のあった彼に手を振ると額に手を当てて溜息をつかれた。
「ちょ、知り合い!!?」
「…新しい指導者…か?」
溝口コーチがこちらに視線を向ける。
「知り合い、みたいだな」
「えぇ、まぁ…彼は…鳥養繋心。私が代表入りする際に専属で教えて貰っていた優秀な指導者です。それからリベロは中総体でベストリベロ賞を獲った2年、西谷夕。大きいのはエース東峰旭。3年です」
こちらに手を振る夕に手を振りかえして微笑む。
「頑張れー、夕」
「見てろよ、麗亜!!」
びしっとこちらを指差して笑った彼。
夕の近くにいた蛍がぺこりと頭を下げて練習に戻っていった。
「麗亜さんっ、この間はありがとうございました!!」
直角に頭を下げた影山。
隣にいた日向君はびっくりしてる。
「どういたしまして、頑張ってね」
「はいっ」
隣から視線を感じて、そちらを見るとどこか拗ねた及川。
そして、呆れ顔の岩泉。
「どうしたの?」
「寿サン…なんで、烏野の奴らとそんなに仲良いの?」
「え、普通じゃない?」
私の言葉に及川は本格的に拗ねたらしく、椅子に座って目を逸らした。
「…どういうこと?」
「寿が名前で呼んでたからだろ」
「あぁ、夕と繋心のことか…」
まぁ、ご機嫌取りは後でいいか…
始まった試合を岩泉の隣で見つめた。
「相手戸惑ってるな、あのチビに」
「舐めたやつは痛い目見ます」
「経験者は語る!」
笑いながら言う岩泉。
私はあの試合を始めから見れてなかったし…
「次は絶対にねじ伏せてみせます」
「興味深いねー…2人にそう言わせる彼について…」
1本目、田中君のスパイクで流れが烏野になる。
やっぱり、流れを掴むときに田中君はいいよねー…
夕のレシーブも、相変わらずすごいし…
夕のあげたボールを打った東峰君。
「うおっスゲー威力」
「さすが、エースかな…岩泉とどっちが強い?」
「…どうだろうな…」
拗ねていた及川が隣に立つ。
「あの2人はどんな感じ?」
「まだ、打ってないけど…そろそろじゃない?」
十分な助走を取って、飛んだ日向君にあげられた影山の正確なトス。
誰も反応出来ずに、コートに叩きつけられたボール。
「飛んだね、烏が」
「あんなに小さいのにな…」
「小さいけど…彼には、翼がある」
面白い子と出会ったな、影山は…
「例の速攻は出ないねー」
「指導者がいるからね。知恵はついてるよ、きっと」
手札を1回戦で晒すには、彼らにはきついものがある。
次の試合、伊達工業は…
「手強いからねー」
試合は烏野の勝利。
そして、烏野の次の対戦相手は伊達工業。
「伊達工業のブロックはやっぱりさすがだよね。岩泉、抜けそう?」
「きついだろ、ありゃ…」
「だよねー」
カチカチとボールペンをノックしながら手元のノートを見つめる。
「どっちが勝つと思う、寿サン?」
「烏野」
「…なんで?」
ノートを覗き込む及川に視線を向ける。
「皆の言うトスを見ない速攻も、そうだけど…この試合は東峰君のリベンジマッチでもある。影山は…絶対にエースの前に道を作るだろうし…」
「やっぱり、トビオちゃん?」
「まぁねー…。けど、やっぱり、チームとして強いんじゃないかな…今の彼らは」
及川が楽しそうに笑う。
「そっちの方が潰し甲斐があるね〜」
「まずは目の前の試合に集中ね」
「わかってるよ〜」
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