予選2日目。
今日は烏野戦。

応援の声と、女の子からの及川への声援を聞きながら
欠伸を噛み殺す。

「…眠そうね…」
「松川…昨日映像見てたから寝不足…まぁ、平気だと思いたい…」
「大丈夫ですか…?」

心配そうに私を見る国見に多分ね、と返事をする。

「皆と違って、私は戦えないから…出来ることは何でもやるよ」
「寿先輩…」
「ほら、WU始まるよ」

国見の頭を撫でて及川のもとへ行く。

「寿サン、ちゃんと寝なよって言ったじゃん!!」
「あぁ、ごめん。音の解析とかまでしちゃって…」
「何でそんなことまで…」

呆れる岩泉に微笑む。

「勝つためだよ。WU頑張れー」
「おう」

コートに入ったみんなの様子を見ながらノートに視線を落とす。

「及川ー、今のトス高い」
「ん、了解!!」
「金田一、もっと力抜いてー。堅いよ、堅い!!」
「あ、はい!!」

みんなの調子は悪くない。
いつも通り怒って及川にボールをあてようとする岩泉を止めて苦笑する。
公式WUが終わってみんなが集合する。

「10番に振り回され過ぎないように。コースを絞って止められるものは止める。それ以外のものは拾う」
「「「はいっ」」」
「寿から何かあるか?」
「…私はコートには立てないけど勝つために出来ることをする。何度だって、背中を押すから…全力で戦ってきて」

おうっ、と返事をしてくれた彼らに微笑む。

「よーし、やるかあ!」

手をプラプラと揺らす及川が真剣な表情に変わる。

「それじゃあ今日も…信じてるよ、お前ら」

及川の試合前にいつも言う言葉。
冗談でも脅迫でもなく及川の心の底からの言葉。
言葉にせずともみんな及川を信じてる。
だからこそ、意味を成す言葉…

その一言で彼らの纏う雰囲気は変わった。
この空気が私は好きだ。
円陣を組んだ彼らの視線がこちらに向けられる。

「寿サンも」
「は?」
「早くしろよ、寿」

監督とコーチに視線を向けると笑って頷かれた。
驚きながらも円陣に近づくと及川に手を握られて円陣の中に引きこまれる。

「行くぞ」
「「「オオス」」」

彼らの声を聞いて、私は微笑む。
ちゃんと、私は…チームの仲間でいられるんだ…

「俺達は頂へ行く」
「待っててくださいね、寿先輩」
「絶対に連れて行きます」
「うん、信じてるよ。みんなを」

コートに入ろうとする及川を呼び止めた。
不思議そうに首を傾げた及川と、足を止めた他の部員。
私は彼らに微笑んだ。

「言ったでしょ、背中は押すって」

両手で及川をコートの中に押す。

「任せたよ、徹」
「…ありがと、麗亜チャン」

堂々と、コートに入っていく姿を見てまた微笑んだ。

「俺も、背中押してください」
「国見…」
「じゃあ俺も」

コートに入ろうとしてた全員が笑いながらこちらに背中を向けた。
1人ずつ、背中を押す。

「みんなも、任せたよ」
「「「おうっ」」」

ベンチに戻るとコーチに髪をぐしゃぐしゃとかき乱された。

「ちょ、コーチ!!?」
「おら、お前にも…やることがあるだろ。アイツらと一緒に戦うんだろ?」
「はい」

ベンチに腰かけて、昨日解析した内容をまとめたノートと、スコア表を膝の上に置く。
それから、彼らについて書かれたノート。
ビデオカメラが回っているのを確認して視線をコートに向けた。
蛍のサーブで始まった試合。
国見がそれをあげて、そして堂々としたツーアタック。

「はぁ…最初から挑発か…」

烏野にツーアタックの宣言をした及川に溜息を零す。
松川のサーブを澤村が上げる
そして、日向君の例の神業速攻。
それを花巻が上げる。
及川がさっきよりもあからさまにスパイクの動作をする。
その動作から岩泉にトスを上げた。
それをなんなく打った岩泉。

少しトスが低いけど…
まぁこれくらいなら調整可能だな…

挑発に乗った影山がツーをやり返す。
それにイラついている及川。
手元のノートに文字を書き入れながら子供の喧嘩か、と小さく呟いた。

苛立ちの見える影山のサーブはコートを大きく外れる。
次は、及川のサーブ…

夕を狙ったそのサーブはきっちりと上げられた。
やっぱり、夕は凄い。
サーブで夕を狙うのはダメか…

相手チームの名簿の夕の名前の横に×を書き入れた。

「すみません俺…10番に引っかかってばっかで」

金田一が及川にそう言うと及川はいつも通り笑った。

「伊達工をも翻弄した烏野だからねー。まぁあの速攻を捕まえる糸口はちょっとだけ待ってよ」

こちらに及川が視線を向ける。
視線が絡み合って、私が微笑めば彼も微笑んだ。

「多分もうすぐだから。俺達には優秀なバックがいる」

靴紐を結び直しながら何か金田一に伝える及川。
内容は聞こえないけど…

「安心してとべ」
「は、はい!」

金田一の背中を押しながら言ったその言葉。
バレーをやってるときの及川はやっぱり誰よりも部長らしく、そして誰よりも優秀なセッターだ。
金田一の踏み切る位置が少し変わる。
それによって、伸ばされた手は高くなったように思えた。

「金田一の調子も悪くない…」

青城が4点、烏野が3点になった時もう1度及川と視線が絡む。
私は迷うことなく頷けば及川も微笑んで頷いた。

「監督、TOお願いします」
「もうわかったか?」
「はい。完璧に」

ニコリと笑えば、TOの指示が聞こえた及川も目を細めて笑った。

「待ってたよ、麗亜チャン」
「お待たせ。少し時間がかかってごめんね」
「いや、全然へーき」

彼の笑顔に部員は首を傾げた。
ただ、私と彼だけが楽しげに笑った。
prev next
back


Top