声援は徐々に大きくなっていく。
体に感じる緊張感。
コートの中で駆け回る彼らが純粋に羨ましかった。
どうして、自分はここにいるんだろう。
どうして、私は無力なんだろう。

お互いに一歩も引かずラリーが続く。
国見が弾いたボールを及川が拾う。
トスが上げられなくなったこの状況。

「「渡/渡っち!!!」」

私と及川の声が重なる。
ラインぎりぎりで飛んで、
「レェフトォォ!!!」

岩泉の声にブロックがつられる。

でもボールは後ろに上がって。
それを打ったのは及川。

「大王様のバックアタック!!!!」

相手コートの驚きとこちらサイドの歓声に包まれたコート。
じわじわと現れてくるチームとしての地力の差。
コートのなかは声が絶えなく溢れて。
13-11.
14-12.

差は広がらない。
それでもこちらのリードは変わらないのに。
日向君がコートに入ることで空気が変わる。
WUゾーンでフラストレーションを溜めた小さなケモノ。
ただ純粋に勝利に餓えた彼。
コートの端から端まで走って全力で飛ぶ。
練習試合で見たワイドブロード。
それはコートに突き刺さり。
体育館は一瞬静まり返った。

15-13.
15-14.

縮まっていく点差。
ラリーが続いて、それでも全力でボールを追いかけて。
そんなコートに響いた彼の声。

「持って来ォォオい!!!」

コート端に飛んだ彼。
それを止めるために岩泉と松川が飛んで。
でもボールは東峰さんに上がる。
日向君の囮。
コートの横幅をめいっぱい使った攻撃からのセンターからのバックアタック。
ボールは及川の手を弾きコートに入った。

15-15.

第3セット、ついに同点。
監督と視線を合わせて、頷いた。

ホイッスルが鳴り響き第3セット1回目のタイムアウト。
日向君はきっと体力の消費は半端ないだろう。
けどそれを追いかけるブロックもそれは同じで。

「どうする10番のあのブロード!?」

花巻の声に私は小さく息を吐いて。
考える彼らを見つめた。

「捨てて」
「え?」

監督がこちらを見て頷いた。

「捨てるってどういう…!?」
「あのブロードは神業の方ってこと?」

及川の問いかけに頷く。

「多分。あのスピードで飛べば体が流れて空中で打ち分ける余裕はきっとない。そんな技術は彼にはない」
「あのブロードにはブロックなしでディグで対応しよう」
「止められないブロックはレシーブの邪魔するだけ出しな…」

負けたくない。
一緒に戦えないこのもどかしさも、コートに立てない悔しさも…
今はいらない。あとでいくらでも抱え込むから。
だから…今は最善策を探して、思考は止めない。
無力な私にできることを続けて。

「どんなに苦しい時でもお互いの意思疎通と考えることをやめるなよ」
「ハイッ!!」

タイムアウトが終わって、コートに戻る及川が私を呼んだ。

「寿サン」
「及川?」

及川は微笑む。
そんな彼に近寄って背中を押した。

「大丈夫。いってらっしゃい」

及川は頷いて、コートに入っていった。

16-16.

日向君が飛んだ。
例の攻撃。
フリーで打たれたそのボールをきっちり渡が上げる。

「やった!!」

思わずガッツポーズをすればコーチが隣で笑った。
烏野が動揺している隙にツーを決めた及川。

17-16.

点差が離れて及川のサーブ。
微かに低かったサーブはネットにかかる。
それを必死に追いかけたがそれは烏野コートに落ちて。

声援が大きくなった。
流れは確実にこちらに来ている。

18-16.

相手コートはどこかバタバタとしていて。
かき乱されている。
中央からの日向君のスパイクをきっちりとブロックが捕まえて。

19-16.

烏野の2度目のタイムアウト。
こちらのタッチネットで19-17.
でも日向君は後衛に下がる。

次のサーブは日向君。
お世辞にもうまくないから…かき乱される可能性は少なからずあるけど。
そんな考えは聞こえたホイッスルに消された。

「ピンチサーバー…?」

蛍とよく一緒にいる山口君だったかな。
…及川みたいなサーブが打てるとは思えないし…

「ジャンプフローター!!?」

彼のボールはギリギリネットにかかる。

けど、菅原君といい山口君といい…
繋心は隠し玉を随分と持ってるみたいだ。
サーブは決まらなかったけど、烏野の空気は変わっていて。

「本当に…凄い人だ…繋心…」

21-19.

流れはきっとこちら。
徐々に疲れが見えてきた両チーム。
そのなかで、必死にボールを追いかける国見。

22-19.
    23-20.
  23-21.
      23-22.

点差は縮みまた広がり。
どちらもただただ、勝ちを求めて。

先にマッチポイントになったのは青城だった。

あと1点。
あと1点が…ひどく遠く感じたのは、どうしてだろう?

「野郎共ビビるなァ――ッ!!前のめりで行くぜ」

夕の声。
緊張の見えていた相手チームの表情は笑顔に変わる。
田中君のサーブを渡が上げて金田一が打つ。
それを田中君が上げて、ダイレクトに打てると思ったそのボールを影山がワンハンドトスで日向君に上げる。
影山の後ろから跳んできた日向君が及川の上を抜いてコートに落ちる。

24-24.

土壇場で追いつかれた。
デュース…
ここからは体力勝負になるだろう。

青城、2回目のタイムアウトのホイッスルが体育館に響き渡った。
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