入学式の次の日。
体育館には一年生が集まっていた。
麗亜チャンはまだ来てない。
「ようこそ、青葉城西バレー部へ。主将の及川徹です」
「岩泉だ」
「説明はマネさんの仕事なんだけどな〜…」
麗亜チャンいないんだよね…。
入口に視線を向けると、ガチャリとドアが開いた。
「遅くなりました」
短い髪が、濡れてる。
あぁ、まただ。
最近、いや…春休みは平気だった。
けど、先輩がいなくなった辺りから麗亜チャンの髪が濡れてることがあった。
「来た来た。あの人がマネさんね」
「マネージャーの、寿麗亜です」
「「寿先輩!!?」」
金田一と国見が目を丸くしてた。
「入部を決めてる人はまず身体能力測るから、及川の方へ。見学と悩んでる子は岩泉の方へ。簡単にバレー教えてくれるから。それじゃあ解散」
麗亜チャンは首にかけたタオルで髪の毛を拭く。
それを視界に入れながら一年生を見る。
「あの、及川さん」
「どうしたの〜?金田一」
「なんで寿先輩がマネなんすか?あの人は…」
「やめたんだよ」
隣から、俺の代わりに返事をした麗亜チャン。
「飽きちゃってさ。中学の時一生懸命やりすぎちゃってさ」
「そう、なんすか?」
「そう。あ、国見久しぶり」
「お久しぶりです」
1年が、綺麗とか可愛いとか言ってるのは麗亜チャンの耳には届いてないのかな…
「じゃあ、能力測定を始めます」
凛とした声が体育館に響いた。
「及川は手伝いよろしく」
「いいよ〜」
その濡れた髪について聞いたら、麗亜チャンはなんて言うの?
ジャージの袖から見え隠れする包帯について聞いたら、なんて答える?
ねぇ、俺に何隠してるの?
****
「1年生は、ここまで。風邪ひかないように汗ちゃんと拭いてね」
「「「「はいっ」」」」
「あと、入り口の飲み物用意してあるから各自飲んでいいよ。お疲れ様」
解散する1年を見てからノートに視線を落とす。
「金田一と国見は流石、かな…」
北川第一は全体的にレベル高いな…
「……どこ行ったのかな、アイツは」
「アイツって、影山っすか?」
「金田一…そう、影山」
「烏野っすよ」
烏野か…
「まだお気に入りなんすか?」
「お気に入りっていうよりは、目が離せないかな。連絡先知らないから卒業以来縁は途切れたままだけどね」
「最後の試合、見たんすか?」
頷いて、ノートを閉じた。
「独りぼっちだった、コートで」
「そうっすね」
「私と、一緒」
「え?」
金田一に視線を向けて、微笑む。
「お疲れ様、今日は早く帰りな」
「あ、はい」
帰っていく1年を見送ってからほかの部員にタオルとドリンクを渡していく。
そっか、いないのか…
私は体育館に転がるボールを見つめた。
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