「お、やってるやってる!!」

無事、代表に選ばれた麗亜チャンは国際試合に出ることになった。
テレビ放送はされないらしく、スポーツチャンネルでしか見れないと国見ちゃんが教えてくれて彼女の試合の日皆で俺の家に集まっていた。

「あ、もう第1セット終わってる」
「だから早めに切り上げようって言ったんだよ」

画面の中、自分たちとそう歳の違わない子たちが国を背負って戦っていて。
ベンチには麗亜チャンの姿があった。

「麗亜さんまだ出てないみたいですね」
「リハビリは上手くいってるみたいだけど。完治したわけじゃないから」
「…フルは出場できねェのか」

リハビリを始めてまだ1か月ちょい。
完全に彼女が昔みたいに戻るにはまだ、時間がかかるだろう。
それでも、彼女が今このテレビの向こうで戦っていることが嬉しかった。
クッションを抱きしめて、緩む口を隠す。
そんな俺に岩ちゃんは気付いて、何も言わずに俺の肩を小突いた。

第2セットも相手のリードで、点差は5点。
確実に劣勢だった。

そんな時、交代のホイッスルが鳴って番号の札を持って麗亜チャンがコートサイドに立つ。

「きた、寿!!」

チームメイトとハイタッチをして、微笑みを浮かべる。

「ピンチサーバーか」
「まぁ、あのサーブだからな」

ボールを手に持った彼女はどこか楽しそうで。
あの頃とは違う、短くなった髪と優しくなった目元。
けどあの頃と変わらない、凛とした横顔。

サービスエースを獲った彼女に会場が沸いて、チームメイトも彼女に駆け寄る。

「あのサーブは世界でも通用すんのか…」
「威力、前より上がってません?」
「確かに」

彼女は笑っていた。
仲間と一緒に。
少し照れくさそうに、でも優しい顔をして。

彼女のサーブに、相手は何とか追いつくがそれが繋がることはなくて。
俺に教えてくれたあのサーブが、相手をあざ笑うかのようにコートに落ちる。

「寿、なんか生き生きしてるな」
「この間の3vs3の時も生き生きしてたけどな」

彼女のサーブだけで逆転をして、あと1点マッチポイントになる。
彼女の打ったボールは何とか相手が拾うが、日本へのチャンスボールとして戻ってくる。
そのボールをセッターにきちんとレシーブして、セッターがボールを上げる。

その先にいたのは、右足で高く飛んだ麗亜チャンだった。

「寿だ!!」

そのボールはコートのラインぎりぎりに落とされた。

「……麗亜チャンだ」

折れた翼で、彼女は再び空を飛んだ。
彼女が1度捨てた空で。

「そんなの見りゃわかんだろって…お前、なんで泣いてんの?」

こちらを見た岩ちゃんが目を瞬かせて、他の皆もこちらを振り返る。

「え、マジで泣いてる…?」
「金田一、ティッシュ」
「お、おう」

自分の頬に手を持っていけば確かに、泣いている。
濡れた指先を見つめて、画面の中で笑う彼女に視線を向ける。

「…及川さん、どーぞ」

金田一からティッシュを受け取った国見ちゃんがこちらにそれを差し出す。

「…ありがと」

濡れた頬をそれで吹けば、マッキーとまっつんが顔を見合わせてニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

「泣くほど嬉しかったの?寿が復活して」
「まぁ、及川は寿大好きだからな」
「う、うるさい!!」

否定は、出来なかった。

嬉しくないわけないのだから。
バレーをしている彼女に惚れて。
バレーをやめようとした彼女を、繋がりを失うことが怖くて引きとめた。
もう1度、プレーをして欲しいと思わなかったわけじゃない。
彼女に鳥籠は似合わない。
空を自由に飛び回る彼女を、何度もう1度見たいと思ったか。

「よかった…」

折れた翼は、癒えただろうか?
俺達と一緒に過ごした時間が、彼女の気持ちを変えられたのだろうか。
もし、そうなら…心の底から嬉しいことだ。

「ホント、よかった…」

折角拭いた頬はまた涙で濡れる。
俺を見ていた彼らは呆れたように笑った。

「こりゃ、重症だな」
「もう放っておけ。どうせずっと泣いてるから」
「岩ちゃん酷い!!」

お帰り、麗亜チャン。
マネージャーをしている彼女も、俺は大好きだったけど。
やっぱりバレーをしている麗亜チャンが一番好きだ。

試合は無事、日本の勝利で終わって。
試合が終わる頃には俺は、ガチ泣きだったと思う。

「及川、マジ泣き…」
「お前、どんだけだよ」

呆れる岩ちゃんが部屋を出て行って、タオルを保冷材に巻いて持ってきてくれた。

「ありがと」
「…岩泉お母さん…」
「こんな息子はいらねぇ」

冷たいそれを目に押し付けて、唇を噛む。
麗亜チャンが帰ってきたら、また泣いてしまいそうだ。





試合は何とか勝利で終わった。
足と肩は多少痛みがあるがまぁ、これくらいは許容範囲だろう。
完治していないのだから、仕方がない。

「お疲れ、寿さん」
「お疲れ様」
「トス、大丈夫だった?」

凄い打ち易かったよ、と言えば彼女は可愛らしい笑顔を見せる。

「寿ー、お前ちゃんと見てもらえよ」
「あ、はい」

監督の声に頷き、コーチの足と肩の状態を見てもらう。
まぁ、問題はないだろうという言葉に私は肩の力を抜いた。

「どうだった?初の試合は」
「楽しかったです。昔みたいには…上手くいかないですけど」

それでも、凄く楽しいですと答えれば満足そうにコーチは頷いた。

「じゃあ帰るぞ」

及川達が絶対に試合見るからね、と言っていたけど見ていたのだろうか。
後で、メールしてみようかな。
そんなことを考えながら、バスに乗った。

夜の自由時間。
もう眠ってしまった子もいる中で、私は1人外に出た。
履歴の一番上にある彼の名前を押せば、数回の機械音の後彼の声が聞こえた。

『麗亜チャン!?』
「私の携帯なんだから、私以外誰がいるの」
『それはそうなんだけど。かけてくると思ってなかったから』

時間、平気?と言えば彼は平気だよと答える。

『試合、お疲れ様。見てたよ』
「ホントに?ありがと」
『楽しそうで…安心した』

うん、楽しかったと答えれば彼はクスクスと笑う。

『よかった』
「…ありがとね、ホント」
『俺、何もしてないよ。帰ってきたら、みんなでご飯食べに行こう?お祝いで』

優しい彼の声にうん、と頷いて口元を緩めた。

「…もうすぐ、帰るから」
『うん』
「そしたらまた、一緒に頑張ろうね」

私の言葉に及川は違うよ、と言った。

『今も、一緒に頑張ってる』
「…そっか。そうだね」
『無理しちゃダメだよ?辛くなったらやめるんだよ?』

わかってるよ、と答えれば彼は安心したようにうん、と言った。

『じゃあ、またね』
「うん。またね」

名残惜しさを感じながら、通話を切って小さく息を吐く。

「よし、明日も頑張ろ」





夏休みが明けて数日。
国際試合を終えて、私はまた青城のマネージャーに戻っていた。

「ドリンク作ってきます」

大学生のチームを招き、練習を重ねる中。
やはり及川の能力の凄さを実感することとなる。
たかだか数プレーで、初対面の人達のチームに溶けこむなんて簡単なことではない。

「ホント、スゴイよねぇ…」

外の水道でボトルを洗いながら1人そう呟いていれば、どこか見覚えのある姿を見つけ手を止める。

「影山?」
「うわっ!!?」

コソコソと体育館を見ていた彼の肩が大きく跳ねた。

「麗亜…さん」
「やぁ。偵察かな?」

気まずそうに視線を逸らした彼に私は頬を緩める。

「別に、咎めやしないよ。前に私も烏野の練習みちゃったことあるし」
「あれは…偵察目的じゃなかった…ですし」
「それでも、見たものは見たから。お互いさまってことで」

ありがとうございます、と彼は頭を下げた。

「大学生と、練習ですか」
「うん。この時期、周りの学校の練習試合組むにはリスクがあるし。強いチームとやらなきゃ意味ないから」

そうなんですか、と言いながら彼は体育館の中、及川の姿に視線を向けていた。

「…そういえば、」
「ん?」

こちらに視線を戻した影山がおめでとうございます、とまた小さく頭を下げた。

「何が?」
「世界ユース…試合、見ました」
「え?あぁ、ホント?」

やっぱり、凄いですねと彼は言って自分の手を見つめた。

「あの頃も、俺のトス打ててスゲェ人だなって思ってたんですけど。利き手変えても凄いし…。サーブも、」
「そんなに褒められると流石に照れるんだけど…」
「あの打つ動作が同じなのに軟打になるサーブ。及川さんと、同じでした」

じっと、こちらを見つめる彼に完全に私の話聞いてないなと苦笑を零す。

「私が教えたからね。威力とかは彼には負けるけど」
「…また、バレーやるんですか?もう…翼は、治ったんですか?」
「あぁ、そういえば少しだけその話したんだっけ。翼は…そうね、完治はしてないよ」

けど、またバレーをやるつもりでいる。
私の言葉に彼は少しだけ嬉しそうな顔をした。

「なら、よかったです」
「なんで?」
「麗亜さんのバレー、俺好きなんで」

機会があったらまた練習付き合って下さい、と言った彼に私たち敵同士だよと言えば眉を寄せた。

「それは…そうっすけど…」
「私たちが引退したらね」

私の言葉に彼は頷いた。

「…はい」
「ほら、見つからないうちに帰りな」

お邪魔しました、と頭を下げて彼は足早に体育館から離れて行く。
その背中はもう孤独な王様ではなかった。

「影山」
「はい?」
「今のチームは楽しい?」

私の問いかけに目を丸くして、すぐに真剣な顔つきに変わる。
そして、迷うことなく頷いた。

「…そっか。安心した」

ドリンクを持って体育館に戻れば及川が私に歩み寄り、首を傾げる。

「どうかした?」
「誰かと話してたの?ちょっと遅かった」
「あぁ…可愛い後輩と少しだけね」

ドリンクどうぞ、と大学生に近づけばサンキューと声をかけられて小さく会釈を返す。

「チャラいのにスゲェな、あの主将」
「ありがとうございます。チャラいのは…まぁ、標準装備だと思います」
「怖いねー、高校生」

彼らはそう言って、ドリンクを飲みながら岩泉と話す及川に視線を向けた。

「頼もしい主将ですよ、本当に」





昼休み、私はふらりと2年生の教室に立ち寄った。

「んー…いない、か」
「あれ、どうしたんですか?」

教室から顔を出した矢巾に、探している相手の名前を言おうとして口を閉ざす。

「ん、なんでもないよ。ちょっと前を通っただけ」
「そうっすか?」
「うん。ありがとね」

教室にいないとなると、彼はどこにいるのだろうか。
昼ご飯を食べるなら屋上か、裏庭…?

ひとまず、屋上に行くかと階段を上り屋上のドアを開ける。
吹き込んできた風に目を細め、ぐるりと見渡せば目的の彼の姿を見つけた。

「久しぶり」

雑誌を読みながらパンを食べていた彼の前に立てば、相変わらず鋭い視線がこちらに向けられた。

「…寿さん」
「あ、憶えててくれた?」
「まぁ…」

雑誌を捲っていた手が、記事を指差す。

「…こんだけ、デカデカと載ってりゃ…思い出す」
「あちゃー、こんな記事出てたの?恥ずかしいな」

この間の国際試合の記事に私は苦笑を零す。
そんな私を見ながら彼は首を傾げた。

「何の用っすか?」
「戻ってくる気はない?バレー部に」

彼の目が一段と鋭くなった。

「君が、チームから離れたのはあの頃の3年と険悪になったから。…と、言うよりは君を上手く扱える3年がいなかったから…だよね?不満そうな顔してたもんね、いつも」
「…だったら、なんすか」
「戻っておいでよ。今なら、きっと君の望むものがあるはずだよ」

吹き込んだ風がスカートを揺らし、雑誌のページを捲る。
春高予選と、デカデカと掲げられたタイトルを見ながら私は微笑んだ。

「望むもの…?」
「トスも、レシーブも、ブロックも、もちろんスパイクも。私が見てきた3年間で一番のモノだと思ってる」
「…へぇ」

及川なら、彼の望むトスを上げられる。
もちろん、リベロの渡だっていいトスを上げる。
レシーブ力は皆高いし、高身長な金田一達もいるからブロックも安定してきている。
IH前にも言った。
今のチームは今まで一番強いチームだと。

「別に、いい子ちゃんになれとは言わないよ。不満があれば言えばいい。あの頃、君が言ったことは何も間違っていなかった。ただ、言い方に問題はあったけどそこのフォローは私がしようか」
「……寿さん、何考えてんスか?」
「何って、勝つことしか考えてないよ。その為に、君が必要だと思った」

前もしつこく戻ってくるように言って、結局戻って来てはくれなかったから何度も来る気はない。

「誘いに来るのはこの1回だけだから。気が向いたら来てね」

後悔はさせないよ。
彼にそう言えばピクと肩が揺れた。

「アンタ…変わってねぇな」
「え?」

彼はそれだけ言って雑誌に視線を戻した。





「オイ!!久々に来たんならマトモに挨拶くらいしろよ!!」
「まあまあまあ矢巾、落ち着いて」
「及川さん」

ちょっとびっくりした。
まさか、彼がここにもう1度来るなんて。

「久しぶり〜待ってたよ〜。オカエリ狂犬ちゃん」

相変わらず鋭い視線がこちらに向けられて、手に持っていたハミチキを齧る。

「え、誰すか?なんすか狂犬って?」

驚いている金田一に矢巾が声を押さえて答えた。

「2年の京谷賢太郎。狂犬は及川さんが勝手につけた。中学ん時結構有名だったろ。ホラ南山中の」
「ああ…!!居ました確かに。南山中はあの代だけ強かったんですよね」
「あいつ協調性とか皆無だけど、実力は俺達の学年ではズバ抜けててさ。入部早々練習試合に出るチャンスもあったんだけどイキナリ当時の3年と衝突してさぁ…」

言う事はともかく言い方がなぁと呟く矢巾の声を聞きながら目の前で周りを見渡す彼を見つめる。

「何だよ、まだ3年居んのかよ」

ずっと黙っていた彼が発した言葉に眉を寄せる。

「IH予選で負けてもう引退したかと思ってたのに」

相変わらずの口の悪さに後ろから苛立つ雰囲気がした。
それに笑いながら彼を見る。

「ムッフフ!!相変わらず狂犬ちゃんは面白い」
「変な呼び方しないでほしいんスケど」
「“ああっ!!及川さんが居る代に同じチームでプレーできてよかった!!”―って思えるようにしてあげるね」

俺の言葉に飛びのいた彼に首を傾げる。

「あれ、来てくれたんだ」

どこかピリピリとした空気を残す体育館に柔らかい声が響く。
その声に狂犬ちゃんは振り返って彼女を見た。

「寿さん、これどういうことっすか?」
「何が?」
「騙したんスか?」

騙したって何のことだろう?
俺が首を傾げ岩ちゃんたちの方を見れば彼らも首を傾げていた。

「騙したなんて、人聞きが悪いなぁ」

彼女はいつもと変わらず微笑む。

「後ろ、見てみなよ。ここにあるんだよ君が望むものがね」
「…予選で、負けただろ」
「あれ、京谷ちょっと馬鹿になった?」

麗亜チャンがスッと目を細めた。
冷たいその視線は、初めて会った頃の彼女を思い出させる。

「敗北を知らない人間に、強さは生まれない。よく、憶えておきな」

男子でも近寄るのを躊躇う彼に、彼女は歩み寄っていき微笑んだ。

「彼らが、青葉城西で一番優れたチームだよ。その目で見たのは…去年のチームだ。まぁ悪い先輩ではなかったけどね、今に比べれば劣って見えるよ」

彼女は狂犬ちゃんの体をくるりと回しこちらを向かせた。

「その目で、ちゃんと見な。ここ以上に京谷が望むチームはない」

彼の背中をポンと叩いた彼女は俺の隣に立つ。

「おかえり、京谷」

眉を寄せる彼に麗亜チャンは変わらず笑顔を見せていた。

「あぁ、それと…不満があれば言えばいいとは言ったけどね、その不満が間違っているものなら…私は容赦はしない」
「っホント、アンタ変わってねぇな…」
「よくわからないけど、ありがとう」

ハミチキをさっさと食べ終えて、練習に参加してねと微笑む麗亜チャンに狂犬ちゃんは小さく頷いた。
いつの間に飼いならしたんだろう?と隣にいる彼女に視線を向ける。

「練習再開してね」
「あ、うん。麗亜チャン、狂犬ちゃんを呼び戻したのって…」
「私だけど?」

あぁ、やっぱりそうか。
去年彼がいなくなって何度も足を運んでいたのは知っていたけど、まだ続けていたのか。

「今のチームなら後悔させないよって言ったら来てくれたみたい」
「ずっと引き戻そうとしてたの?」
「ずっとじゃないよ。去年は途中で諦めたの。けど、久々に呼びに言ったら案外素直に来てくれたよ」

ちょっと丸くなったのかな、なんて言う彼女に多分それ違うよとは言わなかった。

「…ライバル登場…は、ないよね?」
「何言ってんだ、及川」

いつの間にか麗亜チャンじゃなく岩ちゃんが横に立っていて、ビクッと肩を揺らす。

「いやー…狂犬ちゃん、麗亜チャンには懐いてるなぁって」
「あぁ、そういうこと。懐いてるってほどじゃねぇんじゃね?」
「けど、麗亜チャンには生意気言わないよね」

岩ちゃんは視線をマネ業に戻った麗亜チャンに向ける。

「…言わないんじゃなくて、言う必要がねェの間違いだろ」
「え?」
「アイツの言う事はいつだって正論だ。京谷だって昔から言ってることは正しい。ただ、口は悪いけどな」

間違ってねぇからわざわざつっかる必要がねぇんだろ、と岩ちゃんは言った。

「…そう言えば、最初の練習試合の時狂犬ちゃんが言ってたこと確かに正しかった」
「だろ?似てるって言ったらあれだけど、アイツら似てるんだよ多分」

マネ業をしていた麗亜チャンに狂犬ちゃんが近づいて何か言葉を交わす。
彼の目は相変わらず鋭いが、嫌悪のようなものは見えなかった。

「…まぁ、誰が相手でも麗亜チャンはあげないけど」
「あっそ」
「聞いてよ岩ちゃん。なんか、麗亜チャン…ウシワカちゃんとも仲良いみたいでさ」

仲良い?と岩ちゃんが首を傾げた。

「トビオが教えてくれたんだけど、2人で走ってるとこ見たらしくて。確認したら、麗亜チャンがそれ認めて…。あの2人どこで知り合ったわけ!?」
「落ち着けって。…代表だったからじゃないのか?」

それより前だよ、と言えば彼も少し驚いていた。

「試合とかやっても基本お互いに無関心だったし」
「うん」
「…中学で、どっちも県の代表チームだったしそれで会ったことあるとか?」

可能性はあるけど、それで親しくなる?と言えばならねぇなと岩ちゃんは言った。

「もーっ、ホント困っちゃう。麗亜チャンモテすぎなんだよね」
「…まぁ見た目も性格も好かれるだろうな」
「トビオとか烏野の眼鏡君とかリベロの子とか、あの監督もそうだし。国見ちゃんもだし狂犬ちゃんも…加えて、ウシワカちゃん!?ありえない」

さっさと告っときゃいいだろと岩ちゃんに言われ眉を寄せる。

「やっぱ、約束守って告白したいし」
「んなこと言ってる間に捕られても知らねェぞ」
「うっ…だから困ってんじゃん!!」

まぁ、頑張れよと岩ちゃんは言って他のメンバーの所に歩み寄っていた。





練習を終えて、片づけをしていれば珍しく岩泉が1人で私の元に来た。

「寿、ちょっといいか?」
「え?なに?」

片づけをしながら彼の方に視線を向ける。

「お前、ウシワカと親しいって本当か?」

彼の言葉に私は目を瞬かせた。
そう言えば、以前及川からも電話でそんなことを聞かれた気がする。

「親しいってほどじゃないよ。まぁ、会えば話すし…連絡も滅多にないけどしないこともない」

けど、と手を止めて岩泉の方に視線を向ける。

「アイツに勝ちたいって気持ちは嘘じゃない、つもりだけど」
「それはまぁ、わかってんだけど。どこで知り合った?」
「珍しいね、岩泉までそういうこと気にするの」

ウシワカじゃなかったらそこまで気にしてねェよと言われ、私は少しだけ笑った。

「及川のこと心配になったんだ」
「…別に、そういうわけじゃ…」
「平気だよ。間違っても白鳥沢になんて行ったりしないし。アイツと付き合うなんてこともないから」

それに、アイツにはもうバレてるし。
私が及川のこと好きだってこと。
恋愛ごとには疎いくせに、私のことには鋭いから気に入らない。

「ほら、片付け片付け」
「お、おう」

片づけに戻っていく岩泉を見送って、体育館の外で不機嫌そうな彼に声をかける。

「京谷。アンタも片づけ」
「…ッス」

何か言いたげだったが、素直に片づけに行く彼を見て頬を緩めた。

「起爆剤の投入、成功」

後は、上手く噛み合ってくれればいい。
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