「俺はバックの100と200。渚はどうする?」
「僕はブレ。距離はやっぱり100と200かな」
「ハルは?」
「俺はフリーしか泳がない」
聞くまでもないか、とどこか優しげに笑った真琴さんは竜ヶ崎を見る。
「僕はバッタしか泳げません」
「だーよねっ」
「いずれにせよみんなブランクがあって持久力にかけてるから短距離を中心にエントリーするのがいいと思う。あとリレーは…」
真琴さんの言葉に遙さんは目を逸らす。
「別に今決めなくてもいいか…練習しながら様子を見つつ考えるってことで…。朱希はどうする?」
「え?」
「一応個人専門で出るんだよね?どの種目か決まってる?」
真琴さんの問いかけに返事をしようとしたときに聞こえてきた松岡の声。
「大変です!!すごいのみつけちゃいました」
「岩鳶高校地獄の夏合宿IN無人島?」
古い紙の冊子に書かれたイラストと文字に俺は溜息をつく。
「地獄?」
「無人島?」
「楽しそう!!」
その冊子に釘づけになる彼らを余所に準備運動をした俺はプールに入る。
「これ何十年も前に岩鳶に水泳部があった時のものですよ」
「だからなんなんですか?」
「だから、私たちもこの合宿のメニューにのっとって無人島で夏合宿しましょう。県大会に向けて」
俺は息を吐き出してプールの中に沈む。
種目…か…
プールの底に背中をつけて、空を見上げる。
光が反射してキラキラと輝く水面に目を細める。
苦しくなったところで水面に上がると目の前に突き付けられた古い紙。
「海での遠泳特訓!!やりたいよね?」
「は?」
「持久力をつけるには最適でしょ?」
「あぁ…まぁ…」
ハイテンションな松岡と渚から視線を逸らすと遙さんがチラリと真琴さんを見た。
水の中に潜って、遙さんの前に顔を出す。
「…真琴さん、海苦手なんすか?」
「何でだ?」
「…少し浮かない顔してますよ?真琴さんも遙さんも」
遙さんは真琴さんに視線を向ける。
「別に」
「…そうっすか。ならいいんすけど」
いつの間にか合宿はやる方向に決まったらしく、遙さんは浮かない顔をしていた。
だが結局顧問の先生に断られたらしい。
そりゃそうだろ…金ないし…
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