「大丈夫だよ、あの2人なら」
「でも…真琴先輩が助けに来てくれたのは分かったんですが…なんだかいつもの真琴先輩じゃなかったような…」

やっぱり、トラウマが…
俺は目を伏せて息を吐く。
トラウマを、甘く見ない方が良いって言ったのに…

渚と竜ヶ崎の後ろを歩きながら真琴さん達を探す。
胸の痛みは消えた。

傷のある胸を撫でて、俺はまた息を吐き出す。

「あ、いたいた!!ハルちゃん、マコちゃん!!」
「怜、渚、朱希!!よかった、3人共無事だったんだな。怜、助けられなくてごめん…」
「そんなっ!!僕の方こそ、すみませんでした…」
「ううん、無事でよかったよ…」

優しく微笑んだ真琴さんに、遙さんが言った。

「よくない。何やってたんだ、夜の海なんかで」
「練習してたんだよね?少しでもみんなに追いつこうと思ったんだよ」
「…はい」
「ほら、怜ちゃんのせいだけじゃないからさ。マコちゃんもダメだよ、溺れた人を1人で助けに行ったら!ハルちゃんと朱希ちゃんもだよ、いきなり飛び込むし」
「お前もだろ…」
「いやぁ、でもみんな無事でよかったね」

呼吸が苦しい。
胸の傷を押さえて小さく呼吸を繰り返す。
目の前が、白く靄がかってくる。
会話も、遠くに聞こえる。


「朱希…?」

遙さんが不思議そうに、俺の名前を呼ぶ。
返事をしようと口を開いても、言葉が出てこない。

「おい、大丈夫か…?」

遙さんがこちらに歩いてくる姿がぼんやりと見えたところで、体が重力に従って落ちていく。

「朱希!!?」
「朱希ちゃん!!?」

指を1本動かすことさえも出来ない。

「わ、る…い」
「おい、朱希!!」
「に…い、さ…」

駆け寄ってきた人に小さく微笑む。
俺はそこで意識を失った。


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