逃げるように走ってきた俺は誰もいない場所で足を止める。
カタカタと震える体。
近くの壁に寄りかかってしゃがみ込む。
「…止まれよ、マジで…」
遙さんに手を伸ばそうとしたときに気づいた体の震え。
「兄さん…」
あの時よりも、酷い。
手だけじゃなく体まで止まることなく震えている。
あの時は凛の声を聞いて止まったけど…
都合よくあいつの声なんか聞こえない。
「…どうすっかなぁ…」
震えたこの足じゃ立つこともできそうにない。
そこに座り込んで、膝を抱える。
「止まれ…よ…マジで」
目の前に突き付けられた死の危険。
あと少し遅かったら、みんな死んでいたかもしれない。
そう、死んで…
「朱希…?」
あー…幻聴まで聞こえてきた…
「おい、朱希」
「…え?…凛?」
顔をあげた先に眉をしかめて俺を見る凛がいた。
「…大丈夫か?」
「大丈夫…では、ない」
「はぁ?」
俺の前にしゃがみ込んだ凛が俺の手を握る。
「…震えてんのか、お前…」
「…悪い」
俺の前にしゃがみ込んでいた凛を無理矢理自分の腕の中に抱き寄せて肩に顔を埋める。
「ちょ、おい!!朱希!!?」
「マジで…ごめん…」
カタカタと体が震え続ける。
「…朱希…」
背中に手が触れる。
子供をあやすように撫でられて、俺は目を瞑った。
「凛」
「なんだよ」
「…凛…ごめん」
「…別に」
5分か、10分かわからない。
長い間凛に抱き着いていた。
体の震えは何とか、止まった。
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