遙さんのレースが終わってから笹部コーチがやってきた。

天方先生が挨拶しているのを聞きながら視線をプールに向ける。
真琴さん達が予選落ちのことを伝えるとひどく驚いていた。

遙さんが戻ってこないまま競技は進んでいく。

「遙先輩戻ってきませんね…」
心配そうに竜ヶ崎が呟く。

「そう、だな…」
「シャワー浴びてるんじゃないかな?」
「それにしては時間がかかり過ぎのような…僕ちょっと見てきます」

立ち上がった竜ヶ崎を真琴さんが追いかける。
それを渚も追いかけて行った。

「…はぁ…」

その後を追うか迷って、いると聞こえてきた溜息。

「何浮かない顔してんの、松岡?」
「え?あ…いや…」

気まずそうに目を伏せた松岡に首を傾げる。

「仕方ねぇよ、どちらかが勝てばどちらかが敗者になるんだ」
「違うの…私、見たかったの。お兄ちゃんと遙先輩が一緒に泳ぐところ。でも、何か違う気がして…」
「…2人が見ようとした景色が違うからじゃねぇの?」

遙さんに勝とうとした凛と、何かから逃れようとする遙さん。
きっと、松岡が見たかったものとは違うんだろう。
まぁ、遙さんが何から逃れようとしてたのかはわからない。
俺の憶測でしかないしな…


「俺、真琴さん達追いかけるわ」
松岡の頭をポンポンと撫でてから彼らを追いかけた。


目立つ黄色のTシャツを見つけて駆け寄るとタオルを首からかけた凛がいた。

「あれ、タイミング悪かったか…?」
「平気だよ、朱希」
「…なら、いいけど…」

真琴さんの言葉に俺はそう答えて凛を見る。

「そういや、お前らも泳ぐんだったな」
「ねぇ、凛ちゃん」
顔を逸らしながら凛が言うと、渚がすかさず凛の名前を呼んだ。

「ハルちゃん、見なかったかな?」
「ハル?」
「ハルちゃん戻って来なくて…」

渚の言葉に凛が笑う。

「それほど俺に負けたのがショックだったのか。勝ち負けにはこだわらねェ、タイムなんて興味ねェって言ってたくせに」
「勝ち負けじゃない何か別の理由があったんじゃ…」
「あぁ!?水泳に勝ち負け以外何があんだ!!」

少し苛立ちを含んだ凛の言葉に真琴さんが言い返した。

「あるよ。少なくともハルはあると思ってた。だから凛との勝負に挑んだ。でも、それを最初に教えてくれたのは凛…お前だろ。小学校の時のあのリレー…あの時にお前が」
「知るかよ!!とにかく俺はハルに勝った。それだけだ」

俺達の横を通り過ぎて歩いて行く凛を見つめて溜息をつく。
「真琴さん…」
「…行ってきな」
「すいません」

俺は凛の背中を追いかけた。


戻る

Top