「…なに、あれ…」

最初に口を開いたのは渚。

「…傷、ですか…?」

驚いた様子の怜。

「もしかして、あれを隠すために…」

江ちゃんが途中で言葉を止まった。

朱希の背中にある沢山の傷痕。
遠くからで分かりにくいが切り傷ややけどの痕に見える。

「朱希は…あの傷を隠すために…水泳部に入りたがらなかった…って、こと?」
「あぁ」

じゃあ、どうして…
朱希は水泳部に入ったんだろう?
それにあの傷…なにがあってあんなに酷い傷痕に…

「朱希は…あれを隠してた。だから、水着も背中を隠せるやつを使ってた」
「そういえば朱希ちゃん、着替える時俺達とは時間ずらしてたよね」
「最初の合同練習の時に背泳ぎだったのも…あの傷を隠すため…ってこと…だよね?」
「あぁ、そういうことだ」

ハルは真っ直ぐと朱希を見つめたままそう答えた。

「どうして、教えてくれなかったんだろう…」
「そう易々と話せるようなことじゃないってことですよ、渚君」
「マコちゃんの過去の話を聞かなかったのもこれを隠してたからってことだよね?」
「多分そうなるね…」

“俺は…真琴さんに何も話してない。だから、聞く資格はない”そう言っていた朱希の表情を思い出して目を伏せる。
俺達には…話したくないって、ことなのかな…

「…朱希は」
「ハル?」

裏切られたわけじゃない。
けど、出来れば話してほしかった。
きっとみんなそう思ってる。
俺達の間に会話がなくなった時ハルが話し始める。

「…あれを隠してた。傷を晒すのは嫌だってそう言ってた。けど…合宿で…」
「ハルちゃん?」
「合宿で真琴と怜が溺れたとき…アイツは誰よりも先に2人を助けるために海に入った。ためらうことなく服を脱いで海に飛び込んだ」

ハルの言葉に俺は視線をプールにいる朱希に向ける。

「…朱希…」
「朱希ちゃん…」

スタート台の上に朱希が立つ。

「朱希ちゃん、頑張れー!!」

渚がそう叫べば少しビクッと体を揺らしてからこちらを見た。

「朱希君、頑張ってー!!」
「朱希君、頑張ってください!!」

俺達の声を聞いた朱希が胸の辺りに手を添えて笑った。

「朱希…」

隣に立つハルが小さな声で朱希の名前を呼んだのを聞いて顔を緩める。
今すぐに聞けなくてもいい。
いつか…
いつか、俺達を信頼してくれたら…話してほしい。


「朱希ー、頑張れー!!」

大声でそう言えば朱希はぺこりと頭を下げた。


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