05
昨日の雨が嘘のように空には青色が広がっていた。ファミレスに行ったのは初めてで、その相手がなまえだったのがすごく嬉しかった。
相棒だと、言ってくれたのが何よりも嬉しかった。
待ち合わせの時間はお互いに決めてるわけではない。
けれど、今日は少し遅い気がする。
地面に転がるボールを拾おうとしゃがんだとき、聞こえてきた足音。
それはすごい勢いでこちらに向かっていた。
「遅れてごめんねーっ!!」
「なまえ…そんなに急がなくてもよかったのに」
少し、寂しいと思ったけど…
そう、彼女に言えば早く会いたかったからと笑って言った。
ドキリと胸が高鳴って、顔が熱くなる。
彼女と過ごす時間が長くなればなるほどに、彼女の笑顔で胸が高鳴る。
きっと彼女のことが、好き…なのだ。
「これ、買いにいったら遅くなってて、走ってきたの」
彼女が差し出すのは小さな紙袋。
「なに、これ?」
「相棒だって昨日話したでしょ?だからなにか証みたいなのがほしいなって思って」
袋の中からでてきたのはシンプルな指輪と、シルバーのチェーン。
「それね、ペアの指輪なの」
なまえの首にかけられた同じデザインの指輪。
「これ、僕がもらっていいの?」
「うん。暁君にプレゼント。暁君のにはあたしのイニシャル、あたしのには暁君のイニシャル彫ってあるんだよ」
ちょっと恥ずかしいかなーと言いながら苦笑するなまえに首を横に振った。
「嬉しい」
「ホント?よかった。まぁ野球するときは邪魔だからネックレスにしておけばいいかなって」
指輪にチェーンを通して首にかければ彼女は嬉しそうに笑った。
「受け取ってくれてよかった。さ、やろー?」
「うん」
彼女の胸元で光る自分と同じ指輪。
こういうこと、したの初めてだな…
「暁君?」
「相棒って…いいね」
僕の言葉に目を見開いてから、優しく微笑んだ。
「そーだね。今まで一人だったのもこの出会いのためだったなら、受け入れられるよ」
「うん」
彼女はこの出会いは運命だと言っていた。
最近は確かに、そうだと思える。
出会うはずがなかった僕らが出会って、バッテリーを組んで…
「ねぇ、なまえ」
「どうかしか?」
「大切にする…この指輪」
なまえは目を瞬かせて僕を見た。
「何?」
「いや、そういうこと言うと思わなかった…」
「なまえにしか、言わない」
恥ずかしくなって目をそらせば彼女はひどく優しく微笑んでいた。
金髪の長い髪が夏風に揺れ、キラキラと輝いた。
そして、首にかけられた指輪も太陽を反射してキラキラと輝く。
そこにあることを主張するように輝く指輪に嬉しくなる。
「あ…暁君が笑った」
「え?」
「そんなに喜んで貰えたなら買った甲斐があるよ。ほら、やろ?」
うん、と頷いてボールを拾う。
キラリと僕の胸元で光ったそれに、また口角が緩む。
「少し投げたら…キャッチボールしたい」
「ん、いいよ」
ミット構えて彼女は笑った。
「さ、どーぞ?」
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