13
なまえと付き合うことになって少しして。
俺は相変わらずアイツのいる美術室に足を運んでいる。

最愛と名付けられたあの絵は今もなまえの家に飾ってあって。
俺が欲しいと言った絵はこの美術室に飾られている。
今は寮生で持って帰れないから卒業の時受けとることになった。

「なまえ」
「ん?」

俺達の関係はあの頃からあまり変わっていない。
ただ、優しい顔をして俺を見ることが多くなった。

「明後日、試合なんだ」
「日曜?じゃあマニキュア、今日塗り直す?」
「ヤダ」

え?となまえは首を傾げる。

「明日…練習見に来てよ。終わってから塗って。約束だったでしょ?」
「あれ、本気だったの?」
「本気!!あとさ、明後日の試合も見に来てよ」

カッコいいとこ見せるから、と言えばなまえは眉を寄せる。

「…嫌?」
「ま、約束だったから…仕方ないか」
「なんでそんな嫌そうなわけ?酷くない!?」

嘘、ちゃんと行くからと言って彼は優しい顔をして微笑んだ。

「待ってるからねっ!!」
「わかってるよ」

なまえは俺の頬を撫でて、触れるだけのキスをした。





次の日の夕方。
俺は練習してる姿を眺めながら、スケッチブックに絵を描いていた。

「なまえっ!!なんで、夕方に来るわけ!?」
「昼間、暑いじゃん」
「そんな理由なわけ!?」

詰め寄ってくる彼の頭を撫でれば、不服そうに頬を膨らます。

「怒ってんの?」
「怒ってる」
「…ごめんって」

スケッチブックに描いていた絵を彼に渡せば彼は目を瞬かせて。

「うわぁっ凄いっ!!」

ブルペンに立つ鳴の絵をもって嬉しそうに笑う彼に俺も微笑んで。

「貰っていい?」
「いいよ。ほら、マニキュア塗るから持ってきて」

うんっと走っていく鳴を見送って。

周りから凄い目で見られてるけど、まぁ…放っておいていいのか?

「なまえ、よろしくっ!!」
「はいはい」

ベンチに座った鳴の横に座ってマニキュアを塗り直す。

「今日、私服なんだね」
「わざわざ制服着るのめんどくさくて」
「…カッコいい…と、思う」

顔をあげれば真っ赤な顔を少し背ける鳴がいて。

「照れるなら言わなきゃいいのに」
「うるさいっ!!」

全部塗り終わって満足そうに笑う鳴。

「じゃ、今日は帰るよ」
「え…もう帰んの?」
「夕飯の時間とか決まってんだろ?」

そうだけど、まだ時間あると鳴は不服そうに眉を寄せる。

周りにはほとんど人の姿はなくなった。
きっと、彼は戻ったらみんなに絡まれるんだろう。

「鳴」
「なに?」

一応スケッチブックで隠して、キスをすれば鳴の顔は真っ赤に染まる。

「なまえっ!?」
「誰も見てないから。…じゃあ、また明日」
「明日の試合は最初から来ないと怒るからね!!俺先発だから!!」

わかってるよ、と彼の頭を撫でて。

「またね、鳴」
「うんっ!!」

ヒラヒラと手を振って、帰ろうと校門の方に歩いていけば後ろから凄い勢いで何かがぶつかってきて。

「ちょ、鳴っ!?」
「…やっぱ、コンビニまで一緒にいく」
「はぁ!?」

ニコニコと笑うからなにも言えなくなって、ため息をつく。

「待ってるからユニフォームは着替えてきて」
「帰んなよ!?」
「帰んないって。校門で待ってるから」

走っていく後ろ姿を見て、もう一度ため息をつく。

「甘やかしすぎ…か?」

まぁ、可愛いからいっか…
俺は頬を緩めて、校門に歩いていった。

「なまえ、お待たせ」
「早かったね」

ラフな格好の鳴は俺の手を握って。

「ちょ、おい…」
「もう暗いから。ね?」
「…わかったよ」

嬉しそうに笑って、ぎゅっと握りしめられた手を握り返していつもよりゆっくりとした足取りで歩き出した。

「好きだよ、なまえ」
「知ってる。俺も、好きだから」
「うんっ!!」

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