あの景色は忘れない

※R18要素を含みます。
読まなくても 支障はないので、苦手な方は次のお話に進んで下さい。



ベッドに腰掛けて ほら、と手を開いてやれば彼は素直に腕の中に体を沈める。

「弔くん、」
「どうした?」
「キスしていい?」

腕の中から俺を見上げた心喰に好きにすればいい、と伝えれば彼俺の頬を冷たい指先で撫でた。
壊れたのは大丈夫だったのだろうか。
そんなことを考えていれば、唇に触れた少しカサついた彼の唇。
熱を帯びた瞳は今は瞼で隠されている。
触れるだけのキスを何度か繰り返して、彼はそっと瞼を持ち上げた。
その瞳にはより一層熱が篭り、弔くんと艶っぽい声が俺を呼んだ。

「ん?」
「綺麗だったんだよ」

彼はそう言って妖艶に微笑む。

彼の両親はまさか、捨てた息子が殺人鬼になって 自分を殺しにくるなんて思ってもいなかっただろうな。
どういう風に殺したのかはわからないが、彼のこの様子を見れば相当酷いやり方をしたことには間違いないだろう。

「よかったな」
「うん」

再び塞がれた唇。
そして開けて、と催促するように舌先が唇の隙間をなぞる。
素直に口を薄く開けば、いつもより熱を帯びた舌が俺の歯列をなぞった。

「っ、」

冷たい右手が俺の服の裾から入ろうとするのを制すれば彼は唇を離して 「だめ?」と緩く首を傾げた。

「左に、しろ」

俺の言葉に彼は目を瞬かせて、ふふっと笑う。

「壊れちゃって右じゃ体、支えられないから。乗ってくれる?」

彼はそう言って、ベッドに腰掛けて トントンと膝を叩いた。

「…先に直しに行くか」
「ご褒美、くれるんじゃないの?」

仕方ない、と彼の足を跨ぐように座れば彼は満足気に笑い再び俺の口を塞いだ。

「ふっ、ぁ」

熱を帯びた指が服の裾から入り、腰のあたりに触れる。
少し擽ったさを感じて身をよじれば、ぐらりと体が傾いて。
咄嗟に彼に縋りつきそうになった手をぎゅっと握れば、背中に回された彼の手。

「大丈夫だよ、無効化してるから」

背中に手回して、と彼は握りしめた俺の手に触れた。

「いつの間に、やったんだよ」
「弔くんにも触れて欲しいから」

彼の背に両手を回せば、彼は幸せそうに微笑んでまぶたに口付けを落とした。





遠慮がちに回された弔くんの手。
服越しに伝わるその温度が愛おしい。
細い腰を撫で、彼の胸に触れれば 彼の肩が微かに震えた。

「ぁ、」

既に固くなっていたそこに優しく触れれば彼は唇を噛んで俯いた。

「かたくなってる、弔くん?」
「うる、さい」

芯をもつそれを指先で捏ねていれば彼の手がぎゅっと背中のシャツを握りしめて 肩に彼の額が擦り付けられる。

「きもちい?」
「っ、さっさと 下触れ 馬鹿」

弔くんは 前戯を好まない。
まぁ、彼にとってはこれは作業なんだと思う。
人を殺めて興奮した俺を大人しくさせる為の。
けどね、俺は大切な大切な弔くんに触れているんだから。
嫌になるくらい 優しくてし甘やかして気持ちよくさせてあげたいって思ってる。
こんなこと言うと、きっと怒られちゃうけどね。

言われるがまま彼の主張を始めた下半身をズボンの上から撫でる。


「っ、」
「こっちも、かたくなってる」
「や、めろ。いちいち言うな」

テントを張ったそこをズボンの上から形を確かめるように撫でながら、彼の赤く染まった耳に口付け。
そして、口の中に含んで 甘噛みを繰り返す。

「ぁ、かむなって。や、ぁ」
「あぁ、もう。喰べちゃいたい」

どくりって 心臓が音を立てる。

「は?ぁ、やめっ んっ」

ズボンをはだけさせて 直接彼自身に触れる。
熱く かたくなったそれを指先でなぞりながら 舌舐めずりをする。

「ぁ、あっ。ちゃんとっさわれ」
「かぁいい」

下着の中から取り出した彼のものを手のひらで包み込んで擦れば彼の甘い声が 溢れる。
我慢しようとしてても 我慢しきれずに溢れるそれがなによりも愛おしい。

あぁ、彼はどんな味がするんだろう。
彼の血は きっと薔薇よりも綺麗な真紅なんだろうなぁ。
彼の心臓も、きっと誰よりも綺麗で 美味しいはず。

「弔くん、」
「な、ぁっなん、だょ。ひっ、ぁ!」

ぐちゃぐちゃって、音が 俺が心臓を取り出す時の音に似てて 体の熱が一気に上がった気がした。

「一緒に、していい?」

右手で自分のズボンをはだけさせて、彼の腰を引き寄せる。
いつからか立ち上がっていた自分のと 濡れた彼のをまとめて手のひらに収める。

「ぁ、やっこれっきらい」
「だめ。これ以上やったら、本当に 殺しちゃう」
「くそっ、ばかっぁあっんん、」

肩に当たる彼の嬌声混じりの吐息が熱い。
彼の先走りで 時折滑るお互いのモノに彼は体を震わせる。

「そろ、そろっやばいからっ!ぁっもぅ」
「いいよ。イこっか」
「っ、ぁ!あっ」

強く、早く擦ってやればお互いの白濁が混じりながら 俺の手を汚した。
肩で息をする彼の背中を摩って 降りられる?と首を傾げれば 彼は首を横に振った。
肩に顔を埋める彼の首筋が目の前に見えて、噛みつきたくなる衝動を飲み込む。

いつもそうだ。
性衝動が喰べることと直結していて。
逆に、喰べることも性衝動と繋がってる。
だから、興奮が冷めずに弔くんが相手をしてくれることもあるが そこにまた喰べることが繋がってしまう。

「弔くん」
「なんだ…」
「ごめんね、いつも。ありがとう」

心臓を喰べながら ヤったら 多分この上なく幸せなんだろうなと 思わないでもないが。
そんなことをすれば証拠を残してしまうし、ヒーローとやりたいとも思わないから それは味わうことなく終わるだろう。

「…いつも、最後までは やらないな」
「弔くんの負担になるってわかってて やるわけないじゃん。出せば冷静になるから、大丈夫だよ」

俺の言葉に彼は不満そうな顔をして、俺の唇を塞いだ。

「んっ、」

彼からキスされるのは珍しい。
数秒触れて、離れた彼に首を傾げる。

「どうしたの?」
「…別に、お前なら。断らない…」

彼の言葉に俺は目を瞬かせた。

「なんだ」
「んーん。愛されてるなって、思っただけ」

汚れた手を拭えてないから 彼を両腕で抱きしめられないけど彼をぎゅっと抱きしめた。

「……大丈夫だよ。このままで、」

これ以上進めば 俺は弔くんを殺しちゃうから。

「……そうか」





「落ち着きましたか?」

飲み物をバーカウンターに置いた黒霧にごめんねと笑う。

「ちょっと頭がハイになっちゃって」
「…弔は大丈夫ですか?」
「あぁ、」

出された紅茶を飲みながら ニュースを伝える画面に視線を向ける。

「そうだ、黒霧。ちょっと頼みがあるんだけど、」
「なんでしょう?」
「俺の誘拐事件のデータ 弄れたりしない?」

俺の言葉に彼は首を傾げた。

「出来ないことはないですが、」
「血液型を 変えておいてほしい。いつか…誰かが俺に辿り着くかもしれないから」
「……どうして、そう思ったんです?」

彼の問いに俺は首を傾げて、笑う。

「世の中に絶対はないからかな」

からんっとグラスの中の氷が音を立てた。

「らしくないな、心喰」
「そう?」
「…やっておきますね」

テレビに映る自分の両親たちの過去の活躍をまとめた映像を見つめながら、自分の右腕を撫でる。

「暑い日だったんなぁ」

隣に座っている弔くんが 俺の方を見た気がする。

「風も入らない倉庫でさ、窓から差し込む月明かりが妙に綺麗だったのを 覚えてる。自分の背じゃ届かないドアが目の前にあってさ、小人にでも なった気分だった」

自分の無力さを実感した。
自分の無個性を 受け入れてはいた。
自分が望まれない存在だということも幼いながらにわかっていた。
だが、それを上書きするような 絶望だった。

「幼いながらに理解したよね。これが、絶望ってやつなんだって。愛されない末路が これなんだって」

俺の頭を4本指の彼の手が撫でた。

「…もう、いない」
「うん」
「もう。大丈夫だ。よく頑張ったな」

閉じた瞳。
涙は、溢れない。

「俺ね、」
「うん?」
「あの景色は忘れない」




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