とあるバレンタインにて

高校を卒業して、アメリカ Joker’sに戻ってきてから 毎年同じ日に、届くものがある。

「Hayato、今年も来てるよ」
「愛されてんな」

真っ白な箱にえんじ色に近い赤色のリボン。
そしてでかでかと書かれたサイン。
箱の中身は無駄に高そうなチョコレートの詰め合わせだった。

『Hello,My Darling』
「今年もわざわざありがとうございます、鳴さん」
『冷たいなー。せめて英語で答えろよ』

電話の向こう彼は子供みたいに笑った。

『久しぶり!元気してんの?』
「えぇ、お陰様で。」
『ならいいよ!たまには顔見せに来いよ。みんな会いたがってるし』

プロ野球や大学、はたまた社会人リーグとそれぞれの道に進んだ稲実のメンバー。
卒業して以来会えていない人もいくらかいる。

「今度、日本に行くので。タイミングが合えばぜひ」
『何しに?帰省?って、お前の実家そっちか』
「北海道のチーム…名前忘れちゃったんですけど。そこと春キャンプの練習試合です」

聞いてない、と彼は言った。
確かに結構急遽決まってたからな…。

『てか、北海道って!!雅さんのとこじゃん!ずるくね!?!』
「そんなこと言われても…」
『沖縄だろ?フリーの日あんの?』

スケジュール的に2日くらい、と答えれば うち見に来いと彼は言った。

『決定。はい、決定〜』
「…我儘」
『文句言うな。それのお返しってことで。待ってるよ、Darling?』

こうなったら彼が引かないことはわかっている。

「仰せのままに、My Honey?」
『なんだかんだノってくれるとこ好きよ、俺』
「そうでもしなきゃ満足しないでしょ。スケジュールでたらまた連絡しますんで」

じゃ、またな!と切れた電話。
隣で聞いていたのかLeoがニヤつく。

「Honeyねぇ?ノースキャンダルの男がそんなん言ってるって知ったら ファン泣くだろうな」
「付き合ってないってば。売り言葉に買い言葉っだけ」
「Meiの方はわかんないぜ?」

彼の考えなんて、わかるはずもない。
数年前のバレンタイン。
結婚云々の話をしたあたりから、バレンタイン限定で彼はこういう態度をする。
30歳まであと10年もない。
俺もあの人も浮いた話はないからな。

「まぁ…結婚はするかもなぁ…」
「は?冗談だろ?」
「あの人次第。さて、そろそろ時間だから練習 行くよ」

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