改めてはじめまして

「改めまして、私はなまえ・ブラックです。」

あの後、リザさんの家に落ち着き、中佐とはテーブルに向かい合わせに座り、隣にはリザさん。ある意味懐かしい光景で、口を開いた。

「ちょっと待て、なまえ。自己紹介そこからなのか?」

戸惑ったように私を遮る彼に、私は頷いた。

「はい。その方がきっと分かっていただけるかと。」
「...そうか、遮ってすまない。続けてくれ。」

そう再び口を閉ざす中佐。

「四人姉妹の末子として産まれました。ここで言うと、錬金術師の家系だったような…一般的な家庭とは違う家でした。」
「錬金術師では無い…と?」
「はい。今日中佐の錬金術を初めて拝見しました。
…けんじゅうも。凄いですね、錬金術が使えなくても対抗する術を人は持っている。」

自分の世界の狭さに気付かされます、手元のカップに自分の視線が落ちていることに気づき、再度視線を中佐に、そして姿勢を整える。

「私の家は、使える側でした。そして使えない人たちを見下し、近づけさせなかった。勿論、使える人間が全てそうでは無いので、そうして内と外と強く対立していました。」
「君の話し方だと...とても良いとは言えない立場のようだね」
「私は悪か正義か、それは大多数の賛成か...争いに勝った側が決めることだと思っています。」
「ほお。一理あるな」

「私の背負った家名は、少数派の中でもその立場に立つ一族のひとつとして、名が広がっていました。
そして私自身も、学生時代はそれらしく振舞っていました。」
「らしく、って言うのは?」

「私は完全寮生活でしたが、その中で立場の違いによる諍いはよく起きます。
学生たちは学校でのあり方を、大人たちに評価されている事をわかっていたからです。私もまた、私の周囲が、私を"ブラックらしい"と認識させるため、発言し行動してきました。
簡単に言うと死にたくなかったんです。」
「子どもたちの話なのに、まるで戦争ね」

「そうですね…。勿論そうではない人も多かったと思いますよ。でも、私は人を殺す場に同席したくらい、その立場の人に目をかけられている自覚がありました。

何重にも何重にも策を凝らして、逃げるための計画をしました。卒業式を迎えた日、逃げようと。」


「...それから?」


「ありません。...気づけばここにいました。」


中佐は眉間にシワを寄せる。


「なまえ、君を心から信じたい。嘘をついていなくても、真実を隠すのはやめないか。」


「...そうですね、私はあの日、中佐に図書館に連れていっていただき確信したことがあります。」
「なにをだ?」
「ここは...私の生きてきた世界ではないという事です。」

「どういう...」

「地図から全く異なりました。そして私の住む世界にアメストリスなんて国は、少なくとも、国として証明されていません。
さきほど、中佐は、錬金術だとおっしゃいましたよね?」

「そうだ」

「私の世界では、一人のご老人を除いて錬金術を扱うものはいません。そして、その人も姿を見せることはなく、錬金術は存在しない伝説級のものでした。」

「そうか...、君のいた世界では、この前のような未来予知は当たり前なのか?」
「いえ、メジャーではありません。私は未来を見ることは出来ませんが、人の運命を見るのは長けていました。...あの?」
「ん?なんだね」
「信じるんですか?今のこと。」

「とても信じ難いが、君の出会ってからの様子と、そして出会った頃の不自然さを考えれば、私もいろいろ考えてはいたがどれもどこかで当てはまらなくなる。...世界が違うとなれば説明がつくからね。
そして君の目が、嘘をついていない」

ホッと胸をなで下ろす。私でさえ信じられないことだった、_私にとっては好都合、そう肯定的に受け止めたけど_


「だが、もう一つきみは私たちに話していないことがあるんじゃないか」
「...え?」

中佐がちらりとリザさんを確認するように見る。

「...気になってたことがあるの。あなたがいつも持っている、木の棒よ。」


なにか意味があるんでしょう?そう優しく告げるリザさん。

「もうひとつ、きっと信じられないだろうと言ってなかったことはあります。」

私は大腿部のホルターに仕舞っていた杖を_彼らいわく木の棒_取り出した。


「私は...学生時代、こちらのデンキというものとは無関係の生活をしていました。そして、錬金術は見たことがありませんが、似たようなものと共存した生活でした。」
「似たようなもの?」
「はい。魔法です。」

「魔法、だと...」

「私は、純粋な魔法族に産まれました。非魔法族のことを、私達はマグルと読んでいたのですが...、生活様式はマグルと異なります。
私は卒業後マグルの生活に身をひそめるつもりでいたので、在学中にキッチンの使い方は覚えたつもりでしたが、"デンキ"は難しいですね。」


「その...魔法はなにかひとつ、証明することは出来るか?」

「少し、暗くなってきましたね......"ルーモス"」

杖を持ち、なれた言葉を唱えると杖が光を放つ。それを中佐は驚いたように見ていた。


「まさか...いや、科学的には有り得ない。そうか...」



そして、私はもう一つ二人に告げなければならない事があった。

「私がこのことを言うつもりはなかったのは、もう魔法を使うつもりがなかったからです。だけど、これを壊してしまえば私が私である証明ができなくなる。それすら怯えていた...。でも、私はひとりの人間として、役に立ちたい。」