姿を消した彼女
入学した時、ほとんどの人間が彼女達を見ていたんじゃないかと思う。それほど、2人は目を引いた。
黒い髪、白い肌、整った顔立ち。そして彼女たちが持つ、"ブラック"の名前。
彼が、グリフィンドールに来た衝撃でみんなの注目はややシリウスばかりに逸れていたが、それでも彼女のまるで人形のような姿形に見とれる人も多かった。
シリウスは、『お飾り人形』としか彼女を評価せず見ようとしてなかったから、気づかなかったかもしれないが、僕は何となく_何もかも諦めたような_その目が自分と重なったのを覚えている。
そしてその目の薄暗さは、ジェームズも気づいていた様子だった。シリウスがいない時に_いる時に彼女の話題を出すと、彼はとても不機嫌になった_僕にポツリと、「彼女は何を隠しているんだろう」と言ったのを聞いたことがある。
一度だがスニベリー相手に仕掛けていたイタズラの一つが暴発して、彼女の背中めがけて飛んでいったことがあった。
しかし、彼女はまだ4年生でありながら、無言呪文でそれを防いで見せた。_見ていなかったシリウスは認めようとしなかったが_
最後だとシリウスを説得し、彼女から話を聞こうと押しかけた時だ。
_ジェームズは、もし彼女が"抜けたがっている"なら手助けをするのは当然だ、とシリウスをねじ伏せた_
「彼女がなにか準備をしているようにしか思えないんだ」
そう言うジェームズに、シリウスは「闇に本格的に入るための準備だろ」と返していた。
シリウスは、あの家で暮らしていたからこそ、闇の深さを知っていた。だから彼女のことを、そして純潔と呼ばれる一族の人間を信じられなかったんだろう。_それに、彼女の姉であるベラトリックスは例のあの人の下僕として、闇払いで知らない人はいないほど有名だった_
彼女が去る時の目が、そしてシリウスの腕を振り払うその雰囲気が、敵としてでなく『"危ないから"関わるな』と言わんばかりのものに感じたのは、僕だけじゃなかった。
先頭切ったのはシリウスだった。_それも驚きだったが_声をかけたジェームズは絶句した。
彼女が一瞬のうちに消えたことを。
「ポートキーか...?」
「いや、ブラックは明らかに"おとしもの"を拾った様子でしかなかった」
「なら、"ヤツら"か...!?」
抜け出そうとした彼女が、下僕たちにバレた...俺達はそう結論づけていたが、違った。
なまえ・ブラックが消えた。それが魔法界で広まるのはあっという間だった
なぜなら、いなくなったなまえに気づいた彼女の親がタンブルドアに押しかけたからだ。「なまえを"そちら側に"隠したな」と。
机に置き手紙があったらしい。_魔法がかけてあり時間が経つと、その手紙が姿を表すよう仕掛けてあったという話だが_
『さようなら』と一言。
その一件が落ち着いて、俺達の話を聞いたダンブルドアはこう話した。
「彼女は、彼女が生きるための場所に行ったというだけの話だ。」
君たちになにか言うとしたら、彼女の幸せを願いなさい、とだけ。
シリウスは彼女を疑っていたことを、ジェームズは彼女の本当の姿に気づけなかったこと、僕は...彼女の力になれなかったこと、それぞれがそれぞれで悔やんだ。
でも、激化する戦争にそれすら薄れていくのも事実だった。