見つからぬ遺体

「私、今日ちょっと仕事が長引きそうだから先に帰ってて。」

仕事帰りのその殆どはリザと共に帰るが、彼女の予定によって変わる。_元々、一緒に帰ることも、監視の意味があってのものだと思うが_



「さて、なまえ。ディナーに誘っても?」

さて帰ろうか、そう思っていつもの帰途に着くと待ち構えたように立つロイに思わず笑みがこぼれる。


「ふふ、待ってたんですか?」
「君を誘うには、これが一番だと気づいてね。」


連れられた静かな音楽が流れる、いわゆるお高めのお店で、彼は慣れたようにエスコートする。

「さて、君の覚悟も決まったところで。私の思いに答えてくれてもいいんじゃないか?」
「せっかく素敵なお店なのに、もう少し口説き文句らしくは言ってくれないんですね」
「君にはストレートでないと伝わらないと思ってね。」
「私、恋愛は初めてなのでちょっと憧れてたんですけど。」

スラスラと言葉を紡ぐ彼が面食らったように戸惑う。二の句を告げる前に、店員から声がかかる。

「マスタング様、東方司令部より緊急のお電話です。」
「なに?勤務時間外プライベートだ、帰ったとでも伝えてくれ」
「ホークアイ様より、『例の男のこと』で緊急だと言われておりますが」





『国道沿いの市街地が破壊されたそうだ。』
『例の件ですか?』
『さあな、何せ原因が姿を見せん。とりあえず、怪我人の救出と被害拡大を防ぐために原因の調査だろうな。』
『…変ですよね、いまここ(東方)で狙うなら大佐でしょう。そのあなたはここにいるのに、何を狙ってるのかしら。』
『さてね。わかったことは、指揮を取りに一旦東方司令部に戻らねばならんという事だ。』
『残念です。』
『ああ、本当に。君のことをもっと知る機会だったのにな。』
『私の事、もっと知りたいですか?』
『当然だろう、私は人一倍独占欲が強い男でね。恋の駆け引きすら出来なくなるほど、余裕がないんだ。』



私を家まで送るという彼に、司令部へ付き添うかと尋ねると彼は笑って首を振った。

「大丈夫だ、恐らく本格的には明るくなってからになる。……おやすみ」

私の下ろされた髪にキスをして、去る彼の姿に目を奪われる。

なぜ答えないの、そんなの決まってる。
「私はただ、あなたの枷になりたくない。」