秘密の

この狭い世界が嫌いだった。

マグル(非魔法使い)はくだらない塵芥で、混血なんて全くもって愚かで無意味な存在であり、そんな存在など目障り耳障り消えて無くなれば落ち着くのに、と聞き育ち、口を開けば純血を褒めたたえる似たような家系の中で結ばれていく。

嘲笑う誰かの声、別の誰かの悲鳴。私の世界はこれだけなのか。

裏切りには容赦なく、そこに親兄弟や、家族の縁など容易く無くなる。上手くやらなければ消される、賢いのか愚かなのかは分からない従兄弟様を見てあの方法はわたしは取れないと、自分に合う方法自分を守るための手段を学んできた。

昨日、校長室でのダンブルドア先生の言葉が過ぎる。

「もうすぐ卒業だが、進路は決まったかの?」

「なまえ、キミが選ぶ道を尊重しよう」

「足元に気をつけて歩きなさい。躓くことはあっても、人は歩かねばならんからの。」


間違うな、選んだら立ち止まるなと、あの千里眼を持つと言われる目で見つめられると、責められているようで気分は良くなかったが。

あれも、この場所も最後だと思えば。

「結局、キミは最後まで本当の姿を見せてくれなかったね」

卒業式が終わり、最後の帰りのコンパートメントの中。そこで私は悪戯仕掛け人、そう呼ばれる_何をするのも派手な_彼らにに囲まれた。

「何のこと?……あなた達がいると狭いんだけど」

くだらないと表情に、心底鬱陶しいと声のトーンを抑え外の景色を見つめた。

(最後まで気を抜くな、わたしを貫け)

窓の外を見て視線を合わせようとしない私に、シリウス_私の従兄弟様_は苛立ったように「無駄だよ、やめよう」とポッターを急かす。

「いいや、君とこうして言葉を交わすのは最後だから聞かせてもらうよ」

さいご、その言葉に思わず笑い_ようやく_彼ら、ポッターの方をみた。

「…何を?」
「君の成績は最後までボクと、シリウスの後、3番だったね」
「ふふ、嫌味なの?」

からかうように返す私を気にせず、ポッターは続けた。

「いいや違う。君に聞きたいことはね、君はどうして3番を選んでいたんだってことだよ」

「選んだ?実力よ」
「僕たちは、途中から君の成績を僕達のと照らし合わせてたんだ。君ほど頭の切れる人が、どうして毎回3位なのかなと思って。そしたら、面白いことが分かったんだ。」
「ふーん、面白いこと」
「ブラック...、君は必ず僕の間違えた問題と合わせてシリウスの間違えた問題を加えてたね」

列車が止まり、ザワザワと生徒達が降り始める。

「…そうね、今日が最後よ。」
「早くしてくれないか」

焦れたのか、シリウスは心底嫌そうな顔を隠そうとしない。

「簡単なことよ、あなた達が間違えるであろう問題が想像出来たから。」
「なんだって?おまえ、それはどういう意味だ」

動き出した人並みを感じたシリウスに逃がさないと腕をつかまれ、その隣では呆然とポッターが呟く。

「君は、もしかして...」

シリウスの手を振り払い、わたしは立ち上がり彼らを見下ろした。

「私にとって、あの程度は問題にすらならないということよ。あなた達の間違う問題を想像できるくらいね。」

そのまま視線すら振り払うようにコンパーメントを出る。最後の学生生活は終わり、私はしなければいけないことがあった。

荷物を下ろすと素早く駅から立ち去る。今日は迎えに来るなと伝えている。大丈夫。
学生時代散々シミュレーションし、今日に狙いを定めた。

足早に人混みに紛れるなかで、足元で石とは違う何かを蹴飛ばした感覚の先を見ると、落ちていたのか見覚えのないネックレスが落ちている。

不思議な感じがした。嫌な雰囲気ではない、なにか違和感を感じる赤い色をしたネックレス。

(なにかしら...?)


「ちょっと待ってくれ、ブラック!」

そのネックレスを拾ったのと彼(ポッター)の声が聞こえたのはどちらが先立ったか。


光を放つそれに、私は吸い込まれていた。