魔法
国家錬金術師も投入してのイシュヴァール殲滅戦。
どこまで使えるか。錬金術師以外との差はどこまでか。
戦場で、人は人ではなくなる。特に力を持つ者は。
「多くの術師が人間兵器として駆り出されたよ。私もその一人だ。イシュヴァールの生き残りであるあの男の復讐には正当性がある。」
エドは、ふんと鼻を鳴らすとさらにソファへ深く腰掛けた。
「くだらない。醜い復讐心を『神の代行人』ってオブラートに包んで崇高ぶってるだけだ」
関係ない人間も巻き込む復讐に正当性なんてない、そう言い切る姿を眩しいものを見るようになまえが見つめる。
「確かに。でも、恨んでる人間がなりふり構わずやってくるってなると、相手するのは大変なのよ」
「なりふり構ってられないのはこっちも同じだ。我々も死ぬわけにはいかない。」
リザの言葉にロイが、次にあった時は潰す、強くそう続けた。
エルリック兄弟は体を直しに、アームストロング少佐に連れられて行った中、少し静かになった執務室で、ロイがそうだ、となまえを見る。
「さて、だいぶ日も沈んだな」
日が沈み、そろそろ"定時では"帰る時間となる中、今日とて定時と無関係な世界で、ハボックたちは書類片手に奮闘していた。
そんな男たちを無視するように(いや、無視ではない。見えないふりをしていると言ったところか。)のんびり書類に目を通していた大佐が、話を続ける。
「最近、近くに美味しいパスタとワインの店が出来てね。ぜひなまえと良い夜を過ごしたい。」
よくそんなキザなセリフが...とフュリーは呆れ、リザは冷たく返す。
「大佐、まだあります。帰れません。」
なまえさんも笑って「今日は割と平和でしたけど、塵も積もれば…、あと少し今日出来ることはしておきましょう」と返し、大佐はガッカリとわざとらしく肩を落とした。
※
塵も…その言葉にフュリーは、スカーとの戦いが終わったあの日を思い出した。
散らばった鎧の破片、壊れた外壁などで散乱する道路。_道路自体もボロボロなわけだが。_
ここから鎧を探し出して集めろ、とは酷な命令だなとは思ったが従うしかない。フュリーはため息をつく。
鎧でつなぎ止めているアルフォンスくんの媒体に、それ以外の物でも混ぜてしまえば、どう変化してしまうか分からないから、らしい。(僕にはわからない世界だ)
「大佐、私がしますよ。」
そういうなまえさんを大佐が暇な男たちに任せろ時間がかかる、やめておけと説得するが、大丈夫、の一言。(暇ではないことをブーイングしたがしっかり無視された)
でも、自分一人でなんてそんな無駄な手間_明らかに一人でする方が効率は悪い_をかける彼女ではないこともわかっていたからこそ、彼女の真意を図りかねた。
「大丈夫。任せてください。すぐ終わります。」
入れないよう封鎖して、なおかつ憲兵すらいなくなった状況に、大佐と中尉、僕とハボック少尉と彼女が残った。
「どうするつもり?」
中尉が問いかけると、彼女は笑顔で、鎧を集めるようにと持ってきた木箱を指さす。
「集めるんです。」
彼女は木の棒_後に杖だと聞いたけど、今でも杖とは信じられない_を取り出すと、軽く振った。
そう、軽く降っただけなのに、誰もが唖然と固まる。
「すっげえ...なんだこれ」
僕たちには屑にしか見えないものさえも宙に浮かび、自分に意思があるように動き木箱におさまったからだ。
「はい、終わりです。」
ワイワイと出ていくエルリック兄弟の声が響き、その様子をちらりと見下ろした大佐はなまえさんに尋ねる。
「君の力では、彼の体を作ることは出来ないのか?」
ハボック少尉が「魔法ってそこまで出来るんすか?」と目を見開いて視線を向ける。
「鎧の事ではなく肉体の事だが。」
「私は、人を生き返らせることも人を作ることも出来ません。もどきなら作れますが。」
「え...もどき?」
私は杖を取り出して、先程までエドくんが使っていたコーヒーカップに向けて杖をふった。
「え!ネズミ?!」
「...ほお。無機質のものに命を与えることは出来る...?」
「いいえ、これはあくまでネズミに擬態したコーヒーカップでしかありません。命はないし、ただ動くだけのオモチャです。人は複雑なので、擬態させることすら出来ません。」
また杖を降ると、それはコップに戻る。
「鎧であれば、アルフォンス君のようなものは作れるし動かせるでしょう。でもそれは動く鎧であって、勿論彼ではありません。」
魔法の力も無限じゃない。
「だからこそ、人は賢者の石を求めるのでしょう?……彼らも。」
暗くなってきた執務室を彼女が杖をふり電気を灯す。_錬金術師でもない僕からすると、魔法であれ錬金術であれ大した違いは無いのだけど_
「君の力はいつ見てもその法則を理解できないな...」
「私は等価交換を理解できないので、お互い様ですよ」
「君は君の真理で進むというわけか。良いね、嫌いじゃない。」
そう言って笑い合うなまえさんと大佐は本当にお似合いな二人だと思う。
「とりあえず、早く仕事してくれますか。」
まあ、それでも大佐が振られるのはいつもの事な訳だけど。
※
「よし!アル、早速直すぞ!」
ウィンリィに着けてもらってオートメールを動かし、アル、もとい鎧の欠片を見る。
「破片はこれで全部か?」
「うん、イーストシティの憲兵さんたちが丁寧に拾ってくれたって大佐が言ってたよ」
確かに細かい破片からかなり丁寧に拾ってある。俺が見てもただのゴミにしか見えないものまでだ。
ボロボロのあの道沿い、正直、一部クズみたいな鎧の欠片と、ほかの物とをどうして見分けついたのか。
「兄さん?」
「...ん?あぁごめん。さ、直すか!」