紅茶から
私は、彼女、なまえを危険人物としては見ていなかった。
空気を読むのが上手く人より気が利く。なにより頭がきれる。
彼女には始め、本当に雑務しかさせていなかった。なまえの頭の良さ、その片鱗が見え始めたのは早かった。
それは、届いた手紙を渡す時。彼女は量の多いそれを、三段階にわけていた。緊急、平時、プライベート。
そしてその判断がまた的確であり、まだ働き出してまもない彼女がどうやって見分けているのか聞くと、
『士官の階級を覚えました。後は、普段から送ってくる人やそうでない人、封筒の文字の書き方と封筒の状態で判断しています。』
書類整理にしても、彼女の仕事は早く、わかりやすい。少尉も、彼女の有能さには驚いていた。
仕事の終わりに近づき、少尉となまえの3人、なまえのいれた紅茶で、休憩をとっていた。
今日は緊急の仕事が多く、もういい加減休もうと無理に入れた休憩。
「あ、なまえ。わたしと中佐、明日からリゼンブールに行ってくるから。」
「わかりました、いい人が見つかったんですか?」
「ああ、書類上だがね。これが本当なら、いい人材になるよ」
そうなんですね、とわかったのかそうでないのかなまえは曖昧な返事を返した。彼女がふと自分の飲み干したティーカップを見る。
「見つかるか、占いましょうか?」
「面白い、やってみてくれ」
急に言い出す彼女に、思わず笑って返す。少尉は不思議そうな顔をしていた、きっと何をしでかすつもりか疑問になったんだろう。
私は手相など、私の何かを見て答えるものだと思っていた。
しかし、彼女は私に「ティーカップ借りますね」そう言うと、カップを唯見ている。
「希望は叶う。...でもナイフがあるから...何かしらのトラブルがあるみたいです。」
ありがとうございました、とティーカップを私に返すなまえ。
「それはなんというタイプの占いなんだ?」
「紅茶占いですよ、大叔母に教えて貰ったんです。」
大叔母、新しい登場人物に笑みが毀れる。彼女は少しずつ自分のことを話すようになっている。
「帰ってきたら、色々とまだ話をすることがある気がするよ」
隠したいようでは無い、どこまで私たちが受け止められるか考えているようだ。
「はい、大人しく待ってますね」