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入学して3ヶ月が経つか経たないか、そんな時に「実はもう1人いるんだ」と話した先生に「先生が?双子?」なんて悟はからかうように言っていた。
特級認定は確実視されている悟と自分、そして反復術式を持つ者がいる中では肩身がせまかろう。見てもないもう1人のクラスメイトに心底同情した。

「入学拒否って立てこもって手がつけられなかったんだと。」

お偉い方の圧力もあり、彼女は遅れて入学するんだけど、これがまた不思議だった。呪力もそこまで強いものでは無い。体術は素人以下で本人も弱いことを自覚している。

彼女は初登校の日に着ていた赤いパーカーのフードを顔がほぼ隠れるくらい深くかぶってきたその度胸、自分たちとは関わらないという意思表示かと思い見ていた。(後で聞くと、来る途中に季節には早すぎるセミが顔に飛んできたせいで、怖くてフードを外せなかったと言っていた)
「教室で帽子かぶるとはいい度胸だな。」なんて偉そうに悟が無理やりぬがせたフードの下にある彼女の顔がなんとも庇護欲をそそった。(これも今思えば、虫に怯えすぎて涙目だったのだ)

そこそこ有力な一族の出らしく、悟の婚約者候補として入れられたのかなと思ったし、どうも悟もそう思ったようで彼女への当たりはそれはもうキツかった。体術で酷くボロボロにされても、特に気にした様子もなくクラスにいたが、彼女の頭の上で虫を殺したことがあってからは、虫を避けるように悟も避けていた。その様子で、ようやくお偉方から悟を落とせよと命令された訳では無いのかと認識できたのだが。
なにせ彼女の顔は、悟の好みドンピシャだ、これはアイツが見てるAVとか可愛いと評価したアイドルからわかる。

そう、不思議なことはもうひとつ。彼女の任務がないこと。弱いなら弱いなりの仕事があるはずだ。事実祓うチカラとしては弱い硝子も、反復術式を見込まれ後方支援として他の任務へ同行している。
手首や指を飾るアクセサリーを触りながら、彼女が他のみんなが任務に行く中を居心地悪そうに見送る。

悟は彼女について彼女の入学当初より距離を許しながらも、訝しんでいた。

彼女は見る限りは本当に、ちょっとした呪術を使えるくらいの普通の女の子だ。ただ、上の行動が怪しくてクラスメイトとして快く、は受け入れられなかった。