スタート

〇年〇月〇日
窓より正体不明の"お守り"(以下、不明呪具とする)について報告あり。呪術及び呪霊に対して効果を有する不明呪具は、解析を試みる段階で効果が無くなるが、三級程度の数回の攻撃であればなんの障害もなく防ぐことが出来ることから販売元また製造元の特定が急がれる。

〇年〇月〇日
前回報告の不明呪具について、呪術師より以下報告あり。
本日五条悟一級呪術師と呪詛師との衝突にて、攻撃を無効化する様子が見られ、その後の調べにて呪詛師が不明呪具を手にしていたとのこと。早急に調査。

〇年〇月〇日
不明呪具の入手経路が、東京都〇〇区神社の境内にあるとの情報を入手。よって、五条悟一級呪術師、および夏油傑一級呪術師両名を派遣。
「不明呪具の調査及び、当該呪具が今後呪術師への不利益となる場合は速やかに排除すること」



薄暗くなり、町外れのこの場所は静けさと不気味さが増す。五条は歩きながら纏わりつく湿気と、顔近くを飛ぶ虫に舌打ちした。

「くそ、めんどくせぇな」
「悟が例の呪詛師ソイツを殺さずに上手く情報聞き出せたおかげ・・・だね。」
「はいはい、優秀ですみませーん。」

単に興味があっただけだった、完全に格下のソイツが1度でも自分の攻撃を防げたことの真相が。それがこの面倒なことに繋がろうとは。
町外れと言えど、東京。自分の呪術では好き勝手すると、かなり、とんでもなく、面倒になる。

地図を元にたどり着くと、開けた場所に古く寂れた鳥居のたつ神社だ。町中のこの規模にしては小さ過ぎる、と言ってもいい、どこかの分社か。

暗かったからか、傑が足元をケータイで照らす。
足元じゃなくて前を、と言いかけてそこに落ちた小さなマスコットのついた鍵に気づく。

「それが足に当たってね。」

なるほど、だから照らしたわけね。
自転車のものとも違い、しっかりした作りに、「家の鍵じゃね?こんなとこで無くすなよ〜」愚痴ると、落としたものは仕方ないだろ、と傑から混じり気ない正論がきて、嫌な顔を返事代わりに返す。

「女の子か。」
「は?」
「前見てみろ、」

「それ、私の。」

前を向くと、セーラー服の女。その独特な校章は、以前ぼーっと見ていたテレビで特集されていたから見覚えがある、都内の女子高の制服だ。

「はい、」