寝所
「家に帰ってるか」
神妙な顔でローエンの隣で飲んでいた自分に話しかけてきた大団長に、ローエンが自分の横から顔を出して、お、と楽しそうな顔をした。
ファルカが近くに来ていることは察していただろうに、そういう表情をするローエンに、ファルカは辟易とした顔を隠そうともしない。
「ローエンの所で寝てるんだってな」
それに首肯すると、ローエンが「毎晩な」と楽し気にこちらの肩を組んだ。
ぐらぐらと自分の体がはずみで揺れる。
「やめろ」
されるがままでぐらぐらと揺れ続けるこちらの肩を押さえて、動きを止めながら、ファルカは怪訝そうな顔を隠さない。
「ローエンの家に、空き部屋なんてあったか?」
「いや?」
うっすらと笑いを滲ませて告げたローエンが、目を細めてファルカを見上げた。
それに、ファルカが嫌そうな顔をしてローエンを見下ろす。
自分も黙ってそれを見ていたものの、なんとなくいたたまれなくなって顔を逸らした。
挑発気味であったそれに、ファルカが溜め息混じりに瞬きを一度し、思考を巡らせているような顔をした。
「じゃあソファーか? 肩凝るだろうが」
それにローエンも自分も答えなかった。
怪訝そうに片方の眉を歪めたファルカは、すぐに不思議そうな顔に変わって、最終的に眉を吊り上げた。
目まぐるしく変わったその表情を見ながら、敏い男がすぐに正解に辿り着いたことを自分は察する。
「…………おい」
とローエンに向かって低い声を出したファルカに、当の本人はひどく楽しそうに笑っている。
そのままローエンがにやにやとした含み笑いのまま、こちらを見て、一度頭を軽く叩くようにして撫でた。野良猫を可愛がるような杜撰な手つきだった。
お利口とでもいうような、その仕草にファルカが溜め息をつきながら、「最悪だな」と自分たちを評した。
それにすみませんと小さく頭を下げたこちらに「お前だけの責任じゃない」と首を振ってファルカは否定した。