君の好みはメールに色とりどりの絵文字を使う子。

私は文字だけのメール


なのに君はそれだけで気持ちまで伝わるのは君だけだね、って笑うんだ。





意思表明したその日、もう彼らは仲良く2人で帰っていた。そんな彼らを教室から眺めつつ、私は友達を待つ。
家に帰って携帯を見てみると、キヨから一通のメール。

《今日仲直りしたんだけど、#name3#ちゃんこんなメールくれたから転送しまーす》

そう書かれた文の下には5行ほどの色とりどりな文。絵文字やらデコ文字やらが大量に使われている。それにいらだちを覚えてちゃんと読まずにいつも通りの真っ黒な、文字だけのメールを返す。

《良かったね。おめでとー》

胸焼けがする。
帰りに食べたクレープのせいだろうか。



◇ ◇ ◇



「ねー名前聞いてるの?」
「えっあっごめん」
「もー」

そういって口を膨らませたキヨは手元のアイスを一口掬った。
テスト期間で部活がない今日、キヨと私は教室に残って勉強をしていた。
私がここにいる理由はひとつ。今日はキヨの彼女が家の用事で休みだから、それだけだ。いつもだったらここにいるのは彼女だもの。
結局私たちは勉強をそこそこに話し込んでいた。主にキヨのノロケだけど。

「あっでもさ、名前の恋バナって聞いたことないなぁ。俺はいっつも名前に話してるけど。好きな人とかいるの?」
「え」
「あーその顔はいるんだなー?誰々?俺知ってる人?」

予想外のことを聞かれてヒヤリとした。目の前にはニヤニヤと笑うキヨ。
キヨ、貴方だよ、と心で呟く。

「キヨの知らない人だよ」
「へー!どんな人?」
「内緒」
「えー教えてよー初恋の人の好み知りたいなー」
「へ?」
「あれ、言ってなかったっけ?俺の初恋は名前だよ?」
「へ、ぇ…そうなんだ」

やめてよ、そんなこと言わないで。じゃあまだ私にもチャンスがあるのかな、なんて思っちゃうでしょ。
ねーねーどんな人?とまだ聞くキヨに内緒だって、と返すと丁度下校のチャイムが鳴った。




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