君の好みはぱっちりくりくりの目。

私は切れ長の細い目


なのに君は笑うとき目尻が下がるのが好きだよ、って笑うんだ。





「今日はキヨ部活か…」

携帯をパカパカしながら歩く。ちょっとした買い物を済ますために私は制服のまま駅の方に向かった。
夕方の駅周りは学生が多かった。見知った制服も見つけることができる。

「ちょっと慶ー!」
「悪ぃって#name3#」

あ、れ?



◇ ◇ ◇



着崩した山吹の制服と同じように着崩したどこかの制服のカップル。
あれはキヨの彼女、のはず。あのぱっちりでくりくりの目は間違えようがない。
ていうことはつまり

「浮気、か」

彼女も今までの女の子達と同じだったってこと。まあ浮気現場を見たのは初めてだけど。
キヨは女運ないなぁ……。
そんなやつが好きな私も男運がない、のかな。



◇ ◇ ◇



「おっはよー名前!」
「お、おはよ」
「どうしたのー?顔色悪いよ?」
「あの、ねキヨ」
「うん?」
「…んーん。やっぱ何でもない!顔色悪い?寝不足かなー?」
「何それ!別にいいけどさー寝不足なの?それはだめだよ、女の子なんだから!」

それからいかに寝不足が肌に悪いか語りだしたキヨに適当に相槌を打つ。

昨日のことを、言おうとした。貴方の彼女が別の男といちゃいちゃしてました…って。
でも言えなくて。言いたくなく、て。
私の言葉で彼を傷付けたくなかった。いずればれてキヨが傷付くなら、私の言葉ではなく彼女の言葉で傷付けばいいと思った。
加害者にはなりたくないと思う私はずるいのだろうか。

未だ話し続ける彼をただでさえ細い目を更に細めて見た。




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