君の好みは可愛らしいストラップのついた携帯が似合う子。

私は何もついてない、シンプルな携帯


なのに君はそこが君らしい、って笑うんだ。



◇ ◇ ◇



ぺたぺたと廊下を歩けば響く足音。先生に仕事を押し付けられてすっかり帰るのが遅くなってしまった。

キヨはあれからしばらく塞ぎ込んでしまって、試合はボロボロ。南くんに怒られてなんとかやる気を取り戻したみたいで最近はひたすらテニスをしてる。あまりにがむしゃらで、見てて痛々しいと思うけれど、それで嫌なことを忘れられるならそれでいい。

私が立ち直らせたかったけど。それはいつもテニスなんだ。
私はテニスにも、勝てない。



◇ ◇ ◇



自分のクラスに向かう途中、話し声が聞こえてきた。これは、数日前キヨをふった彼女のものだ。歩みを止めて、盗み聞いた。

「そーなんだよーちゃらいからいいと思ったんだけどさあー。
バレたらうっとくてさ、そーうん別れた別れた。はははは」

……腹がたった。じゃーねぇという声を聞いた後にそのクラスの扉をガッと開け放つ。
びっくりした顔の彼女はじゃらじゃらストラップのついた携帯を持っていた。ああ、こういうこところが違うんだなあとスカートのポケットの携帯に外から触れた。なぞっても四角い形しか感じられない。



◇ ◇ ◇



「あんた…ああ、キヨの」
「幼なじみ。さっきの電話、どういうことかな?」
「は?…あーキヨと別れたこと知ってんでしょー?その話してただけだけど?」
「キヨに対する言い種酷くない?仮にも好き合ってたんでしょ」
「えーまあかっこよかったしいいかなみたいな」
「なっにそれ…!」

机に座ったままの彼女はその言葉に少しびっくりしたように目を開いてから、にやっとこう続けた。

「なんなの?あんたキヨ好きなの?」
「…好きで悪い?あんたよりずっと長く好きだよ!だからキヨが彼女作る度泣きそうになってんの!それに毎回あんたみたいなキヨのこと分かってない女ばっかり!
どうして、どうして私じゃダメなの……」

最後は完全に独り言。唖然とする彼女にごめんなさい、とだけ言って教室を出た。




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