君の好みはキスがしやすい身長の子。
私は君と変わらない身長
なのに君は目線が近くて話しやすい、って笑うんだ。
家で泣き腫らした目をなんとか分からないぐらいに誤魔化して、家を出た。こんなときでも学校はあるから助かるようで忌々しい。
扉を開けば、キヨの姿。一瞬固まったのを悟られないよう話しかけた。
「おはよう」
「…おはよう。一緒に行こう?」
「え?ああ、うん」
いつもなら確認なんかとらずに隣に並ぶのに。少しの違和感を覚えながらも歩き出す。
私より少し高い位置で彼のオレンジが揺れている。
◇ ◇ ◇
「……」
「……」
キヨが喋らない。いつもなら途切れることなく話すのに。
気分でも悪いのかと彼の顔を覗き込んだ。
「なっ何」
「いや気分でも悪いのかなって」
「そんなこと、ないよー」
「…ならいいけど」
彼女に振られたのがまだ効いてるのかな、なんて思って胸が痛くなった。
ほぼ無言のまま学校について、私のクラスが見えてきた。
「……あのさ」
「ん?」
「話したいこと、あるから。放課後迎えに来る」
「え、分かった」
なんの話かなんて分からなかったけど、キヨの真剣な顔は私の困惑を誘った。