この前別れた駅で待ち合わせで、何処に行くかは秘密だと言う彼の言葉を思い出して、私はくすりと笑った。
「あーどうしよう…!」
スカートかズボンか、悩み始めて20分。
結局可愛さを求めてスカートにした私は時計をチラ見してやば、と家を出た。
◇ ◇ ◇
駅前には千石くんの姿。
急いで駆け寄ると、彼は気付いて手を振ってくれた。
「ごめん、待った?」
「んーん!まだ待ち合わせ時間なってないしねー
じゃあ行こっか!」
「結局どこに?」
「いいからいいから!」
そう彼は初めて会った時のように私の手をひいて駈け出した。
千石くんが買った切符で電車に乗って、揺られる。
お金の話をしたら今日は全部オレのおごりだから、なんていっても譲ってくれなかった。
◇ ◇ ◇
「おー!イワシの大群ー!」
「タダ券でここまで喜んでもらえるなんてラッキーだよ」
「ね、次あっち行こう?」
「ん、いいよ」
彼が連れてきてくれたのは水族館だった。久しぶりのそこははしゃぐには十分だった。
初めひかれていたはずの手は、気付けば私がひいていて。
比較的家族連れが多い中、私たちはカップルのように見えるんだろうかとこっそり照れ笑いながらも期待した。
◇ ◇ ◇
「はい」
「ありがとー」
差し出された缶を受け取る。
私たちは水族館の敷地内の公園に来ていた。
私の隣に座った彼が楽しかった?と聞いてきた。
「勿論!水族館とかすごい久しぶりだったし」
「そっか!元気出たみたいで良かったー…。
名前ちゃんを泣かせるような男なんか忘れて欲しかったし」
「え、」
「…あっいや、あの」
「どうして、知ってるの…?」