閑話

「お前さあ、ナマエと訓練するのはいいけど気をつけろよ」

 ナマエの部屋を退出したフェリクスに、シルヴァンは諭すような視線を投げた。
 一瞥したフェリクスの眉が寄せられ、怪訝な顔付きになる。

「ナマエはあれでも一応女の子なんだからな?小さいし細いし、お前が本気で打ち込んだら折れちまう」
「チッ」

 ────こいつらは、なぜそれを俺に言う。
 フェリクスが進む足を速めた。
 ナマエもシルヴァンも揃って当人の前では心配する素振りなど見せない。どこか一線を引いたような、あっさりとした態度をしてみせるくせに、本人がいなくなるとこうだ。

「おい、フェリクス聞いてんのかー?」
「聞いている。そんなに心配するならお前が訓練相手になればいいだろう」

 ため息混じりに返した言葉をシルヴァンが笑い飛ばした。

「俺は他の女の子で手一杯だから無理だって」

 その軽薄さは演じているのか本心か。
 計りかねたフェリクスがさらに歩く速度を上げた。

「……なぜお前らは隠したがる」

 何を、とは言わずとも伝わった。
 一瞬驚いたように瞬きをしたシルヴァンだったが、すぐにもとの薄っぺらい笑顔に戻る。

「なんでってなあ。人生は一回きり、楽しまないと損だろ?」

 ────どうせ、ナマエと結婚するのは変わらないんだ。
 諦め混じりの声は小さすぎてフェリクスに届かず消えた。

「今のうちに遊んでおかないとな」

 へらりと笑ってみせたシルヴァンにフェリクスはほとんど無表情で口を開く。

「……遊んでるのはお前だけだがな」
「まっ、それはナマエの自由さ」

 肩を竦めたシルヴァンを今度こそ無視した。