06.兎おいしかの塔

「おら、持ってきたぞ」
「ご苦労様でした。大変だったでしょう、たぶん」
「一言余計なんだよ、一言」
「いやぁ、エイリアン回収業務なんてしたことありませんので」
「何度もあってたまるか」
「それで、」

「ナマエ、あんたちゃんとご飯食べてるの!?」

「近藤局長は何故着ぐるみを…」


バカ皇子の命令により、エイリアンを一時的に保管することになった入国管理局に、そのエイリアンを捕獲した真選組の方々が来局したと思ったのだが、ひとり見覚えのある男が着ぐるみを装着していた。

勘違いではないと思うが、あの人って相当な幹部だったと…組織の頂点じゃなかったっけ。


「事件解決のためだ」
「事件解決…」
「ちょっとナマエ!無視してんじゃないよ!まだ反抗期なの!?」
「ずっとこのノリですか」
「おう」
「おう、じゃなくて。なんとかしてくださいよ。助けてくださいよ」
「あんたっていっつもそう!お母ちゃん悲しい!」
「無理だ。近藤さんを止められンなら、今頃ストーカーにもなってない」
「近藤局長、ストーカーなんですか…!?」
「やべぇ口滑った」


真選組のトップはストーカーってシャレにならない情報を得てしまった。
明日からどういう気持ちで真選組と関わっていけばよいのだろうか。


「ところでよ、お前、万事屋のチャイナ娘と知り合いだったな」
「あからさまに話題変えましたね」
「いいから」
「…まぁ、はい。定期報告の担当がいつの間にか私になってまして。神楽ちゃんがなにか?」
「さっき渡した化け物を退治した男がいたんだが、そいつがなんとチャイナ娘の親父だと」
「え!神楽ちゃんのお父さん!?」
「しかもあのエイリアンバスターの星海坊主だとよ」
「それは…驚きですね…!神楽ちゃんに会いに来たんですかね」
「ああ…そういえば人探しに来たっつってたな」
「神楽ちゃん、嬉しいだろうなぁ。よかった」
「あいつめちゃくちゃ嫌がってたぞ」

「…それにしても」
「あ?」
「どうして私に教えてくださったんですか?副長殿は業務中なんて特に無駄口叩くタイプではないですよね」


鬼の副長という異名の通り、業務に対して人一倍厳格な土方殿が同じ組織でもない人間に雑談を始めるタイプの人間ではなかったはず。疑問に思ったので素直にきいてみた。


「そりゃお前…必要だと判断したからだろうよ」
「…そうですか、ありがとうございます。ふ」
「おいてめぇなに人の親切笑ってやがんだ」
「いや笑ってな、ですよ」
「笑ってんだろうがよ!しょっ引くぞ」
「職権乱用!」
「ねぇまた俺がいること忘れてない?」


真選組からエイリアンを受け取った後、管理局内を移動している途中に見知った顔をみつけた。土方副長殿から聞いたことは本当だったらしく、搭乗ゲート付近にて中年男性と一緒にいる神楽ちゃんを見つけたので思わず声をかけた。


「神楽ちゃん!」
「ナマエ…」
「お父さんが来てくれたんだってね!よかった」
「……」
「神楽ちゃん?」


調子が悪いのだろうか。
いつもの神楽ちゃんとは様子が全く違うことにすぐ気がついた。
なにかあったのか、そう訊ねる前にダンディな声に遮られてしまった。


「失礼。ウチの神楽と知り合いか」
「も、申し遅れました。私、江戸入国管理局で勤務しておりますミョウジと申します。神楽さんを担当しておりまして」
「成る程。それは世話になったな。礼を言う。今日地球を発つ。もう手を煩わせることもねぇだろう」
「きょ、今日ですか…」


もしかしたら故郷に帰るのかもしれないな、とは思っていたが、あまりにもはやいお別れに動揺を隠せなかった。


「もう時間なんでな。これで失礼する」
「重ね重ね失礼しました…。神楽ちゃん、向こうでも元気でね」
「…」
「行くぞ、神楽ちゃん」


まさか地球にきたその日に娘を連れ帰るとは。
しかし、それ以上に神楽ちゃんの様子に違和感を感じる。
あれが久しぶりの親族との再会を喜び、母国へ戻る子どもの姿といえるのだろうか。




考えるよりもまず身体が動いてしまう。
私は万事屋に電話をかけていた。

何度も定期報告催促の為にかけていたせいで、いつの間にか覚えていた。
万事屋は閑古鳥が鳴くほどいつも暇だと新八くんが言っていた。



「……なんで今日に限って、出ない…!」



宇宙船が出発するまで、そう長くはない。
私にできることがあるとすれば


「すみません、今から有給とらせてください」






神楽が化け物と闘っている中継を見て、銀時は気がついたら定春に乗って化け物と神楽がいるターミナルを目指していた。


「定春、途中でバテるんじゃねぇぞ」
「わん!」


そういって走っている最中、銀時たちの背後から乗り物の音が響く。
追手か?

しかし、銀時の警戒は杞憂に終わった。


「坂田さーん!定春くーん!」


銀時たちの背後から走ってきたのは、中型バイクに跨ったナマエだった。


「はぁ!?おま…なんで…つか何乗ってんだよ!?」
「説明は後!神楽ちゃんを連れ戻してください!個人的な依頼で、お金は後払いで!」
「…てめぇに言われるまでもねぇよ」

「え!?なんて!?小さくて聞こえません!」
「るせぇな!恥ずかしい事何回も言わせんじゃねぇぞ!」
「よくわからないですけど、受けてくれるんですね!?」
「ああそうだよ!」
「ありがとうございます!ターミナルまでの近道にご案内するので、私についてきてください」


そう言って女がレバーを引いたバイクは音を轟かせ、銀時たちの前へ出た。


「だってよ、定春。へばんじゃねぇぞ!」
「わん!」


近道というだけあり、車は通れないであろう細道やジャンプを繰り返し、ターミナルが間近に見えてきた頃、バイクの速度が徐々に落ち、銀時たちの方へ近づいて口を開いた。


「無事到着ですね。後は頼みます万事屋さん」
「おう、言われるまでもねーっての」
「わん!」


バイクとは対照的に人を乗せた大型犬は速度を上げ、群衆なんぞ気にもかけず橋の上を進んでいった。


「間に合って…ください」


バイクから降り女が独り言ちた願いも届いたのか、茶の間までを賑わせたエイリアン暴走事件は表面上ハタ皇子の活躍により終息を得た。

  

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