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「何やってんのお前」


抑揚のない気だるげな声が響く。
トド松さんは小さくため息をついて、素早くチャックをあげると、私から少し距離をとってにっこり笑う。


「んん、なまえちゃんが1人じゃ着られないっていうから」


ね。
念を押されるように小首を傾げられて、つられるように小さく頷く。


「けど、ほら、着れたからさ。似合うね。かわいいよ」


ふうん、と鼻を鳴らした一松さんは、随分とやる気がなさそうだ。
自分から聞いておいてさして興味はないらしく、埃っぽいベッドに勢いよく腰掛ける。
ぼふん、と部屋に舞ったちりを気にもとめずに、一松さんはじっとトド松さんのほうを見つめる。


「一松兄さん、なまえちゃんの面倒、僕が見るから……」


トド松さんの小さな呟きに、一松さんがにやりと笑う。


「ヘェ、なにトッティ、独り占め?」
「そ、そんなんじゃ……ない、けど……」


ちらり、と向けられた目はすぐに逸らされて、トド松さんは、じゃあ一松兄さんにバトンタッチかな、と曖昧に笑って慌てるように扉の向こうに姿を消してしまった。
殺風景な部屋に取り残されたのはわたしと一松さんだけで、一松さんはトド松さんが消えた扉をぼんやりと眺めている。


「ひひ」


それから、独特の笑い声と、ゆったりと向けられる眠そうな瞳。


「かわいそうに、ネェ」


ちっともそんなこと思ってないくせに、一松さんは心底楽しそうに笑う。
ふん、と喉を鳴らして、私を見下ろすように目の前に仁王立ちして。


「あのとき、死んだ方が良かったって、思うかもね」


もう、逃がしてなんか、やらないけどね。
一松さんのかさついた手のひらが胸元に伸びてきて、私は何度目かわからない後悔をしたのだった。

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うたかた