08


「肌、白いねぇ」


項にかかる息がくすぐったい。
果たして、息がかかるほど近づく必要はあるのかないのか。
というか、無いと思うのだけれど。
お願いします、と言ってから、数分経ったと思うが、トド松さんがファスナーに手をかける気配はない。
何が楽しいのか、くすくすと笑い声を漏らしながら、私の背後に立ったまま。


「んん、綺麗な肌だね」


つぅ、と剥き出しの背中を指でなぞられて、思わずびくんと腰が跳ねる。
ぞわわ。
なんとも言えない不快感が背筋を駆け上がって、さぶいぼがたつ。


「そんなに、びっくりしないで」


くすくす。
チョコレートみたいに甘い声は、どろりと脳みそを支配する。
トド松さんの冷たい指先が、何度も私の肌を撫でる。
手が冷たい人は心が温かい人、というのは、本当だろうか、なんて、ぼんやり考えたりして。


「ちょ、っと……」


ぱちん。
トド松さんの笑い声と一緒に、何かが外れる音が耳に響いて、胸元がやけに楽になる。
このひと、下着、外した。


「へえ、やっぱなまえちゃん、胸大きいね」


くすくす。
楽しそうな声が耳元で聞こえて、思わず身をよじる。


「ええ、ダメ。暴れないでよ」


男の人にしては細い腕。
だけど、私なんかが抵抗したところで、びくともしなかった。


「トド松、さん」


するり。
骨ばった手のひらが、ドレスの中をまさぐる。


「トド松さん、やめて、」


小さな呟きは、終ぞ彼には届かなかったらしく。
いや、きっと、聞き入れるつもりがなかったんだろう。


「ふふ、やわらかいね」


冷たい手のひらが、肌をすべる。
背中、お腹、胸、首筋、太もも、それから。


「そんなに柔らかかったら、すぐに壊れちゃうよ」


ふふ。
視界の隅に見えたトド松さんの瞳は、やっぱりちっとも笑っていなかった。

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うたかた