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絶叫と土下座。
松野ファミリーへ来て二日目の朝は、その二言に尽きる。


「あの、気にしてないので……」


小1時間私の目の前で頭を下げるカラ松さんに、どうしたものかと辟易する。
ほかの5人はまだ許さないというふうに頑なに腕を組んでいるし、どうしよう。

昨晩。
酔っ払ったわたしは、それはもう筆舌に尽くし難く。
甘えて甘えてハグしてキスして、てんやわんやだったと彼らから聞いた。
あまつさえ、カラ松さんにくっついて離れず、優しい彼はそのまま私を抱き抱えて自室に連れ帰ったらしい。
その後はまあ私もなんとなく覚えている。
カラ松さんが目覚めると、わたしの服はだいぶはだけてしまっているし、片手はショーツの中、もう片手はブラを押し上げており、そこに運悪くわたしたちを起こしに来た一松さんが鉢合わせた、らしい。

げしげしと土下座状態のカラ松さんの頭を蹴る一松さんにも、カラ松とセックスしてないよなあ?としつこく私の身体をベタベタ触るおそ松さんにも、なんと言っていいのか全くわからない。
とりあえずおそ松さんは服の下に手を滑り込ませるのをやめてほしい。


「まさかカラ松が一番に手出すとか意外すぎたよ」


呆れ返ったようにため息をついたチョロ松さんが、額に指先を当て、眉間にシワを寄せて俯く。


「なまえちゃんは処女のまんまでって約束したじゃん」


ぶすくれたトド松さんの言っている意味はよくわからないけれど、うんうんと頷く皆さんを見てああそうなのかなあとぼんやり考える。
ままで、の続きがきになるけど、聞かなかったことにしておこう。
というか、わたしはどれだけ酒癖が悪いんだ。
もう二度と飲まないでおこう。


「んー、じゃあカラ松もそろそろ頭に血ぃ上って真っ赤だし、なまえちゃんに免じてここは不問な」


おそ松さんの号令に、他の人はしぶしぶ定位置につく。
顔が真っ赤なカラ松さんも、改めて本当にすまなかったと私に頭を下げた後、壁のそばへ駆け寄っていった。


「そんじゃあ今日はね、なまえちゃんが正式にここの住人になる儀式しよ」


ニコニコ笑うおそ松さんに、逆らえるはずはなく。


「俺達が信じてるのはね、一番の絆は血の繋がりってこと」
「なまえちゃんはね、違うよな」
「だから、言うこと聞いてくれる?」


笑顔のおそ松さんの周りに、5人がそっと集まる。
トド松さんが懐から取り出したのは、小さなナイフだった。
キラリと冷たく光るそれに、ぴくりと肩が震える。
私の反応を見て、六つの口が同じように弧を描く。


「最初に俺らが見本みせるからね」


おそ松さんはそう笑って、机の下からグラスをふたつ取り出した。
目配せをされたトド松さんは、ナイフを自分の手首に向けて、そのままスッと引く。
無表情のトド松さんと、ツウ、とグラスに滴り落ちる血の不釣り合いに、背中がぞっと寒くなる。


(なに、なに、なに)


固まる私をよそに、儀式、はどんどん進んでいく。
次に十四松さんの腕に傷がついて、その次は一松さん、チョロ松さん、カラ松さん。


「これで仕上げ」


にっこり笑ったおそ松さんが、殊更強くナイフを引く。
ポタポタと、ほかの5人より勢いよく流れ落ちる真っ赤な血が、わたしは怖くて仕方なかった。

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うたかた