20


チョロ松さんの腕に舌を這わせるころには、血の味も人によって少し違うんだな、とぼんやり考えられるくらいには思考は回復していた。
相変わらず吐き気を催すほど不愉快なのは変わらないけれど。
チョロ松さんは相変わらず無表情で、だけど腕を離してくれないところを見ればまだ飲めということらしい。


「……もういいよ」


すっと腕が離れて、我慢していた涙がついにぽろぽろ零れる。
彼はそれも無表情で見下ろした後、ぽん、と一度だけ頭を撫でてくれた。


「ごめんな」


低い声が耳元で響いて、チョロ松さんと入れ違いにカラ松さんの腕が目の前に現れる。
ちろちろと血を舐めとれば、ほんのり頬の赤いカラ松さんがそっとわたしの髪をなでる。


「いいこ」


もういいぞ。
柔らかく笑ったカラ松さんが、私の額に唇を寄せる。
ちゅ、と音を立てて離れたカラ松さんが、いきなり視界から消える。


「さいごおーれ」


カラ松さんを蹴飛ばして、おそ松さんが楽しそうに笑う。
ん、と差出された赤黒い血に、そっとまつげを伏せて舌を差し出す。
にやあ、頭上のおそ松さんが笑う。


「なんかこれすっげエロい」


フェラされてるみてえ、とけたけた笑うおそ松さんに、チョロ松さんのバカかというツッコミが飛んでくる。


「なまえチャン」


すっと腕が離れて、赤みがかった瞳が私を捉える。


「これでもう、逃がしてあげないよ」


舌の上の生臭いかおり。
ああやっぱり、私は間違った選択をしてしまったのだろう。
それでも心底嬉しそうに笑う6人を、私はどうしても、憎いとは思えなかったのだ。

- 21 -

 

うたかた