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(トド松独白)
涙と笑顔がオンナの武器、だなんてよく言うものだ。
あの日、か弱い小鹿のように震えていたあの子は、男を喰らうのだそうだ。
初めてそれを聞いた時は、なにそれ、と鼻で笑うことしか出来なかったけれど。
だけど、一目見て確信した。
これ、ダメだなって。
特別可愛いわけではないし、スタイルだってありふれたもの。
それなのに、ふしぎな雰囲気の女の子だった。
そもそも、ぼくらは女の子があまり好きじゃなかったんだ。
女の子は可愛い。
いい匂いがするし、ふわふわして弱そうで、だけどほかのどんな生き物より打算的だ。
きっと彼女達はスカートが翻る角度も、うつむいた時のまつげの影も、振り返るときのシャンプーの香りも、すべて計算してる。
幼なじみのフリーの殺し屋のあの子も、世界一可愛いと思うけど。
そんなふうにこじらせにこじらせて、気づけば20数年。
泣く子も黙るマフィア一派が雁首揃えて童貞とはこれいかに。
一応言い訳しておくと、誘って来る女の子も腐るほどいたし、色仕掛けもされ慣れた。
だけどいまいち。
はいはい、そんなに金がほしいわけ?
僕も兄さん達も、すっかりひねくれてた。
あの子は、たぶんちがう。
匂いがしない。
天然であれなら、末恐ろしいよ。
だけど計算してるならもっと怖い。
マフィア欺くってすごい女だよ。
男の心を喰らう悪魔。
あの子は、そう呼ばれてた。
だからほしくなったんだよね。
あの日、おそ松兄さんがあのこを連れて帰ったのは偶然なんかじゃなかったんだ。
ねえなまえちゃん、ぼくらのこころもくらってみせて。
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