06
「なまえちゃん銃の扱いもサマになってきたね」
チョロ松さんが呆れたように笑って、そっとハンカチを差し出してくれる。
血に濡れた髪を撫でて、生臭い鉄の匂いに顔を顰める。
血に少しは慣れたとはいえ、嫌いなのは変わらない。
「はやくシャワー浴びたいです」
赤黒く染まるハンカチにため息をついて、ゆるりと首を振る。
結い上げた髪の先から血が滴り落ちないようにタオルを頭に巻いて、最悪ですとひとりごちる。
「なまえちゃんカッコイイね!」
愉しそうに笑う十四松さんと隣の一松さんは返り血で真っ赤で、毎回なんでそんなに派手に他人の血を浴びているのか全く理解出来ない。
反対に、血ひとつついていないのがチョロ松さんとトド松さんで、カラ松さんとおそ松さんはほんのすこし赤が滲む程度だ。
「今日はなまえチャンが3番目に紅いねぇ」
にやにやと楽しげに笑う一松さんが何を考えているかわからなくて、何も答えず困った笑みだけを浮かべておく。
ひひ、と楽しげに笑う一松さんの心は読めない。
一番えげつないセクハラをしてくるくせに、どこか飄々と掴みどころがない。
白いスーツの返り血をぼんやり眺めながら、深くため息をつく。
「ねえもうここに用ないし、早い所帰ろうよ」
トド松さんに急かされるようにして、次々に表に止めた車に乗り込む。
ちらりと自分の服を見下ろして、小さくため息。
「この格好で車乗るの申し訳ないです」
じっとりと血に濡れた髪とスーツに視線を投げて、おそ松さんが肩をすくめる。
「気にしなくていいのに。十四松とか一松はどうなんのよ」
呆れたように笑うおそ松さんが自分のジャケットを投げてよこす。
「まあ、それで拭いて。ないよりマシでしょ」
既にじっとり血を含んだ黒いスーツに、言いたいことは山ほどあったけれど。
時間もないので、小さくありがとうございますと呟いて、車に転がり込む。
ほんのりとムスクが香るこのスーツの価値は、考えないことにしようと思う。
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