08
「風呂上がったぁ?」
「はい」
髪をふきながら部屋に向かうと、おそ松さんがにやにやしながら肩を組んでくる。
いい匂いすんね、と首筋に顔を埋められるのはあまり気分のいいものではないからやめてほしいなあとぼんやり思いながら、ほかの5人がいるであろう大部屋に向かう。
「なまえちゃんお疲れ様ー!」
「お疲れ様でした」
「なまえちゃん、今日ちょーかっこよかったねー!」
「ありがとうございます」
へへー、と笑う十四松さんに小さく笑い返して、ソファに腰掛ける。
「一松がごめんねー?」
「あ、いえ。……びっくりしただけなので」
「シャワールーム行くって言ってたのにいなかったからさー……気づくの遅くてごめん」
「大丈夫です、カラ松さん来てくれましたし」
チョロ松さんに手渡された紅茶にお砂糖を入れて、くるくるまぜる。
当の一松さんはソファの端っこに腰掛けて、知らん顔だ。
「あ、そういえばさあ、一松が言ってたんだけどなまえちゃんおっぱいおっきくなっイッッテェェェ!」
「おそ松。お前いい加減にしろよ」
ジト目のカラ松さんがおそ松さんの頭にげんこつを落とす。
おそ松さんは頭を抑えてしゃがみこんだ後、少し涙のにじむ目でカラ松さんを睨む。
「ばかじゃねえの!ばかじゃねえの!!お前ゴリラなんだから手加減しろよ!!!」
「お前が馬鹿ばかり言うからだろ」
「ふっざけんなよ!!!!」
「ふざけてない」
「カラ松もなまえちゃんのおっぱいでかいって言ってただろが!!!!!!」
「それ本人の前で言うからおそ松兄さんはクソなんだよー」
「ハハッ、最低だね!」
「っんっだよ俺ばっか!!!!!」
ぶすくれていてーいてーと頭をさするおそ松さんにひとつ笑って、大丈夫ですかと頭を撫でてみる。
「なまえちゃんやさしいーーー!!!!」
「なまえちゃんそいつ調子のるから優しくしなくていいからね」
「はは…………」
上機嫌にもっと撫でて、と笑うおそ松さんは正直可愛い。
細い黒髪をゆるゆると撫でると、おそ松さんは私の胸元にすりすりと頭を寄せるようにくっついてくる。
「はいセクハラ」
トド松さんに引き剥がされた彼は心底面白くなさそうで、頭をかいて、いつもの定位置に座った。
「あー…………とりあえず今日はおつかれさま」
「んでさあ、早速次の話なんだけどぉ」
嫌になっちゃうよねーとふるふる首をふるおそ松さんに、チョロ松さんが呆れたように眉を寄せる。
「なまえちゃんに任務」
「……はい」
「来週から潜入調査」
おそ松さんの言葉に、5人が不満げに眉をしかめる。
「……それ、なまえちゃんじゃないとできないわけ?」
「女の子の方がやりやすいんだよねー」
「……風俗か?」
「んや、あー…………うーん近いかも」
「……なにそれ。反対なんだけど」
「そう言ってもね」
「他に方法ないんすか?」
「そうねー……」
「僕行こうか?」
「んーん……」
煮えきらないおそ松さんの返事に、5人が詰め寄る。
「ちょっと黙れ」
低い声が響いて、大きな部屋が静まり返る。
「俺らがずっと追ってた案件……何回か失敗してる。正直チャンスだろ」
「わ、かってる、けど」
「やってくれる?」
ゆったりと、赤い瞳がこちらを捉える。
こくりと肯けば、おそ松さんがニコリと笑った。
(なんでそんなに辛そうに笑うの)
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