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頭が割るように痛い。
ガンガンとうるさい頭を抑えて、ゆっくりと息をつく。
じゃらりと、聞き慣れてしまった金属音。
眉を顰めると、くつくつと笑い声が降ってきた。
「おはよう、寝顔があまりに美しかったから、眠り姫かと思ってしまった」
肩をすくめてみせる男は軽薄に笑って、それから冷たい床に座る私と目線を合わせるようにしゃがみ込む。
「はは、そんな顔をしないで。美しい顔が台無しだなぁ」
「…………」
任務は失敗、それどころか敵に拘束されて今どこにいるかもわからない。
完全に油断した。
自分の未熟さに腹が立つ。
どろどろと胸をせりあがってくる汚い感情に蓋をして、ヒュウヒュウ息を繰り返す。
「ああ、大丈夫か?お嬢さん。そうだ、何か飲んだ方がいいな」
困ったように笑った男はすっとペットボトルの水を差し出して、何も入っていないよと小さく笑う。
そんなの信用できるわけない。
ついと横を向いて唇をかんだ私に、頑なだなぁと小さく呟く。
「飲むか飲まないか聞いてるんじゃないよ」
くつりと笑った男がペットボトルの口を無理やり唇にねじ込んで、私の鼻をつまむ。
悪趣味なそれにぐっと眉をしかめると、男は心外だというふうに首を振った。
「っは……ゥッ」
小さく唇を開いた瞬間、待ってましたと言わんばかりに口の中に水が流れ込む。
むせ込んだ勢いに任せてだいぶ飲んでしまった。
唇の端から水を零して、酸欠でくらくらする頭をゆるゆると振る。
「はは、ほんとうにかわいい」
すりすりと顎を指先で撫でられ、ぞわりと背筋に寒気がはしる。
「松野、だったか?あんな犬っコロの飼い猫なのか?はは、あのくそガキ共には勿体なすぎるだろう。宝の持ち腐れだな」
「……」
「気が強いところも、いいね」
ぺらぺらちっとも止まらない言葉に、嫌味の一つでも返してやろうと思うけどやめた。
それすら面倒くさい。
無言で睨みつけてやれば、いっそう笑みを深くするのが腹立たしい。
ゆっくりと近づいてきた男の顔に、その先何をしようとしているのか察してじわりと冷や汗が浮かぶ。
「っいや、」
思い切り顔を背けると、傷つくなあと男が笑う。
ぐうと顎を固定されて、男の息遣いまでわかる距離に近づく。
あ、やばい、吐きそう。
「ハァイどうも」
きゃらきゃらと軽く笑う声が響く。
今一番会いたかった人たち。
今一番会いたくなかった人たち。
わたしの事なんて放っておけばいいのに。
「ヒーローは遅れてやってくるってねェ」
赤い目を細めて、彼はにんまりと笑った。
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