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「ふうん。あなたがなまえちゃん?」
ぱちくりとこちらを見つめる目は大きくて、睫毛は長くて、唇はウルウルしてるし、本当にとんでもない美少女。
彼女はジロリとわたしを見つめて、それから細い指で私の髪を撫でた。
「ま、トト子ほどじゃないけどそこそこね。このクソ童貞ゴミカスマフィアに酷いことされてない?」
「トト子ちゃん言いすぎじゃない?!」
にっこり笑った彼女は可愛くて、久しぶりすぎる女の子に頬が緩む。
ゆるゆると首を振れば、そう、と小首をかしげるのが可愛い。
「あ、あの、トト子さん、は、おそ松さんたちとどういう関係なんですか…?」
言葉を交わす7人に恐る恐る声をかければ、彼女はああ、と思い出したように目を開いた。
「言ってなかったわね、私は弱井トト子。この六つ子の幼馴染で、フリーでお仕事してるって感じ〜」
「トト子ちゃんはね、腕利きの殺し屋だよ〜。俺らも何回かお世話になってるし」
「利害一致すれば現場が一緒になることもあるわね〜」
トト子さんは、長い髪をくるくる弄んで、ちらりと倒れ込む男のスーツから財布を取り出す。
「まあ、今日はこれくらいでお暇するわね」
「え、帰んのー?うち寄ってけばいいじゃん!」
「トト子も暇じゃないのよ」
ぐずるおそ松さんには目もくれず、トト子さんはわたしの頬をつんとつついてにっこり笑う。
「さんづけしなくていいわよ、なまえちゃん。どんな子かと思ってたけれど、うん、気に入っちゃったわ。ゴミカス童貞どもに何かされたらトト子に言ってね」
ちゅ、と投げキスをして、彼女は部屋から姿を消した。
いつの間にか握らされていた小さなメモには可愛い文字で数字とアルファベットが並んでいて、一番下にはピンク色のリップマーク。
「トト子ちゃんに気に入られるとかすげーね」
へらへら笑うおそ松さんが、肩を組んでくる。
そうなんですか、と返事を返すと、彼は可笑しそうに笑った。
「超絶可愛いしイイ子なんだけどね。ちっと気難しいんだよね」
「まあそこも可愛いんだがな」
うんうんと鼻の下を伸ばして頷き合う六人を眺めて、はあ、と気のない返事を返す。
だけど本当に可愛い人だったなあ。
松野ファミリーにあそこまで強気だなんて、すごいし。
ぼんやりメモを見つめていると、ニヤニヤ顔のおそ松さんがぐいと顔を近づけてくる。
「嫉妬してる?」
「……は?」
「トト子ちゃんに嫉妬した?」
何を言ってるんだろう。
いつもの悪ふざけだろうと小さくため息をつく。
けれど、ちらと視線を投げた先には、真顔の5人がこちらを見つめていて、予想外の反応にびくりと大袈裟に肩を揺らしてしまった。
「……え、なんですか」
「嫉妬してないの?」
ぽつりと言葉を落とした一松さんの本音は見えない。
なんだか居心地が悪い。
それでも止めてくれる人は誰もいなくて、はは、と私の口から乾いた笑みが零れるだけだ。
「トト子さん、可愛いですよ、ね」
ようやく絞り出した言葉は、彼らのお気に召すものではなかったらしい。
いつもと雰囲気の違う6人に気圧されて、困ったように俯いてしまう。
正解がわかんない。
「ちぇー。つまんねーの」
軽い口調に、はっと顔を上げると、そこにはいじけたように唇を尖らせるおそ松さんがいて、いつもの彼にほっと胸をなでおろす。
「トト子さんばっかり〜!とか可愛いこといってくんないの?」
「……は、はぁ」
おそ松さんの女の子の演技、なんか、上手いなあ。
声色を変えてふりふり腰を振るおそ松さんを見つめながら、小首を傾げる。
「なまえちゃんが可愛いこと言うの待ってたのにね〜」
つまんないね、というトド松さんの声に、5人はうんうんと頷いて、ようやく建物をあとにする。
ぞろぞろと車に向かって歩きながら、微妙に機嫌の良くない彼らをどうしたらいいのだろうと内心溜息をつく。
「トト子ちゃんに連絡入れといたら?」
チョロ松さんの声にひとつ頷いて、スマホを取り出す。
IDを入力すると現れた可愛い自撮りアイコンに頬が緩む。
「………………なんでそんな喜んでんの?」
何故か頗る機嫌の悪い一松さんにえ、と言葉が詰まる。
久しぶりの女の子だし、すっごく可愛かったし、なんかいい匂いもしたし、それに、
「……トト子さんは、みなさんの、大切な人なんです、よね?」
「……うん?」
「だから、嬉しかったです」
意味がわからない、というふうに、まゆを寄せる皆さんを見て、うまく言えませんけど、と小さく苦笑いが零れた。
「みなさんの大切な方に会えて、嬉しかったし、悪く思われなくて安心しました」
私の言葉にみなさんは目を見開いて固まって、ややあってそう、と素っ気ない返事だけを返したり、黙ったきりだったり。
それでも。
「…………ずりぃよなぁ」
そう、困ったように笑いかけてくれたおそ松さんの声色はとっても優しかった。
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