18
いつぶりかのホームは懐かしい匂いがして、くたくたになった身体をひきずるように大広間に向かう。
今回の報告を、とのおそ松さんの言葉に、応と返した五人が続く。
「ま、報告っつってもあそこで聞いたことくらいかな?」
「まあ定期報告は受けてたしな」
「なまえちゃん怪我ないし何にもされてないんでしょ?」
代わる代わるかけられる声にこくこく頷くことしかできず、ずいと近づいてくる三人に身体を引いてしまう。
「まだ処女なんでしょ?」
「怪我もないんだよね?」
「なまえちゃん疲れてるだろうし、シャワーしたら休ませてあげようよ」
トド松さんの有難い言葉に、六人はうんうんと頷きあって、それからおそ松さんがあ、と声を漏らす。
「なまえちゃん、任務ご苦労さま。んで、おかえり」
にっこり笑ったおそ松さんに続くように、全員におかえりと微笑みかけられて、なんだか泣きそうになってしまった。
そっか、私はここに帰ってきてもいいんだな。
私はここに帰ってきたいと思ってるんだな。
「……はい、ただいま帰りました」
小さく笑みを零せば、にっこり笑ったおそ松さんがよくできました、と柔らかく髪を撫でる。
「そんじゃま、なまえちゃんも疲れてるだろうし今日は解散なー」
「明日はオフだろう?」
「最近立て込んでたしね。たまにはゆっくりしようよ」
わらわらと自室に向かう6人に続いて広間を後にする。
とりあえずシャワーを浴びたい。それから時間の許す限り寝たい。
「あ、なまえちゃん」
返事をして振り向くより先に、後ろから伸びてきた腕にぎゅうと抱きとめられた。
ふわりと鼻をくすぐるのは甘い香り。
「おっそいよ。どんだけ時間かけてんのさ」
ぶすくれたトド松さんの言葉に、すみません、と小さく返せば、胸の下に回った腕の力が強くなる。
「無事でよかった……」
耳元に零れた声が震えていて、なんだか泣きそうだったから。
大丈夫ですよ、と、ありがとうございます、と、小さく呟いて、肩に埋められた顔に頬をすり寄せる。
顔を上げたトド松さんの瞳が揺れて、形のいい唇がそうっと開かれた瞬間、視界を黄色い袖が遮った。
「ボクもなまえちゃんとハグ、お願いします!」
ニコニコ笑いながら、前から私をぎゅうぎゅう抱きしめるのは十四松さん。
少し苦しいくらいの力に、思わず笑みが零れる。
「あんね、僕達ね、なまえちゃんがいなくてスゲー寂しかったの!」
「……そ、そうなんですか」
「うん!だってなまえちゃんいい匂いするし、優しいし、いい子だし。兄さん達もトッティも、なまえちゃんいなくてイライラしてたし悲しんでたよ!」
「ちょ、十四松兄さん!」
「えっへへ、だからね、しばらくは僕らの充電させてね!」
ぎゅー、と言葉に出しながら抱きしめる力を強くした十四松さんを、おずおずと抱き締め返せば、それは嬉しそうに笑ってくれた。
「ん!じゃあ今日はこれで充電おわり!」
「フル充電ですか?」
「んーん!まだ足りない!でもね、なまえちゃんお疲れだし、たぶん兄さん達も充電スッカラカンだから来るよ!」
ニコニコ笑顔の十四松さんは、ほんのりと頬を染めたトド松さんと一緒に部屋へ戻ってしまった。
気を取り直して浴室に入って、頭からシャワーをかぶる。
うう、もう面倒くさいな。
適当に洗って寝ちゃおう。
ざぷざぷと大雑把に髪を洗ってトリートメントをして身体を洗って、もういいやとシャワーノズルを締める。
「絶景ー」
「んぅ」
いやに響いた声に、いつだかのデジャヴを感じる。
さっとタオルで身体を隠して横を見れば、想像通り一松さんがニヤニヤ笑ってタオル1枚で突っ立っていた。
「デジャヴです」
「この前はクソ松に邪魔されたんで」
こともなげにしれっと言い放つ一松さんの感情が読めない。
「なまえちゃん以外とおっぱいあるよね」
「あがります」
「まあまあ。裸の付き合いも大事じゃない?」
「色々間違ってると思うんですけど」
「んーん、あー、肌白いよね」
一松さん、人の話を聞かない。
するりと骨ばった指先が腰を撫でて、ぞわぞわした感覚に身体をびくんと震わせてしまう。
「えー、こんなんで感じんの?どんだけ敏感?いや、淫乱?」
「風評被害です!」
もう上がろうと思っていたところだし、と扉に向かって歩こうとすれば、ぐんと腕を掴まれて転びそうになる。
「あ、危ないです!」
「逃げようとするほうが悪いでしょ?あ、てか見えてるよ、ちく」
「一松さん!!!!!!」
デリカシーがなさすぎる!
タオルを持ちなおした私に一松さんはひひ、と喉を鳴らして、それから濡れた髪をかきあげる。
「え、ちょ」
そのままぎゅう、と抱きしめられて、素肌と素肌が触れ合う感覚に、顔が熱くなるのがわかる。
「は、はなしてください一松さ、」
「……もーちょい」
耳元に落ちた声は小さくて頼りなくて、腰に回された手は優しくて。
いつもと違う一松さんの様子に、なんだか抵抗できなくなってしまう。
「…………よかった。ほんとに怪我ないね」
「え?」
「なんでもない。なに、抵抗しないの?そんなにスケベしたいんですか?ド変態だねあんた」
「あがります!もう!」
ニタニタ笑う一松さんの腕を振りほどいて、浴室を後にする。
扉を閉める時、そうっと振り返って見た一松さんは、ひどく優しく笑っていた、気がした。
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