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「あ、忘れてたわ」


しばらく私の肩を顔を埋めていたおそ松さんが、ぱっと顔を上げる。
ちらりと振り返った先の顔が、思ったより近すぎて、ぎょっとして身体をよじってしまった。
まつげ、ながい。


「なまえちゃんに俺らのこと紹介しとくね」


へらりとわらって、私のことを抱え直すようにして後部座席をそっと指さす。
振り返った先には、ニコニコ笑うピンクのシャツの彼。


「右側が、末っ子のトド松。口がうまくて、甘え上手」
「女の子の扱い、一番うまいの僕だと思うよ。よろしくね、なまえちゃん」


小さく会釈をすれば、にっこりと笑いかけられる。
それから次に指さしたのは、助手席の彼。


「五男、十四松。さっき自己紹介してたけど。ずば抜けて身体能力が高くて、何考えてんのか俺らもよくわかんねー」
「なまえちゃん、よろしくね!」


改めて差し出された手を、躊躇いがちにそっと握る。
十四松さんは、嬉しそうに笑って、大きな瞳でぎょろりと私を捉えた。


「なまえちゃんの隣に座ってんのが、四男の一松。さっきわかったと思うけど、変態で根暗」
「おそ松兄さんも言うよね……まあ間違ってないけど」


ヒヒッ、と引きつったような笑い声に、ねっとりと絡みつくような視線。
思わず、すり、とおそ松さんの方に近づくように身をよじれは、一松さんは殊更楽しげに笑った。


「神経質な三男チョロ松。小言がうるさいクソ童貞」
「お前も童貞だろうが」


じろり、とおそ松さんを睨むチョロ松さん、は、への字の口元を一層歪めて、ちらりとわたしに視線を投げる。
当たり前だが探るようなその瞳に、少しばかり居心地が悪くて、小さく会釈をしておく。


「運転してんのが次男のカラ松。クソイタイサイコパス野郎」
「フッ、よろしくなカラ松ガール」


カラ松ガールって何なんだろう。
おそ松さんの暴言を無視して、カラ松さんが笑う。
ミラー越しに見えるカラ松さんの瞳が、私を捉えて、ぱちん、とウインクされた。


「そんで、俺が長男おそ松」


流れていた景色が止まって、おそ松さんがわたしを抱き抱えるようにドアをすり抜けた。
彼に促されるように見上げたそこには、おおきな、屋敷。


「ようこそ、俺らのファミリーへ」


歓迎するぜ、なまえチャン。
にんまりと笑った彼らに、わたしはようやく、とんでもないことをしてしまったと実感したのだ。

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うたかた