誕生日小話03
「トッティとなにしてたの?!?!」
キョロキョロとせわしなく視線を動かす彼は、トド松さんが出ていった扉の方を見つめて笑う。
「トド松さんとですか?トド松さんとは、」
「あっやっぱいい!!!あんね、僕の時間はほかの男の名前出すのはダメっスよ!」
自分から聞いておいて、と少し思いながら、十四松さんらしい反応にこくりと頷く。
十四松さんはそんな私を見て満足げに笑って、顎に手を当てる。
「じゃ、とりあえずこれきて!!!」
さしだされた黄色いワンピースを大人しく受け取って、トド松さんのピンクのワンピースを壁にかける。
「うーん、どうしよっかな!なにしよう!やきう……はなんか違う気がするー」
うーんうーんと唸る十四松さんにくすくす笑って、なんでもいいですよ、と返す。
「んー、じゃあね、まねっこげーむしよ!」
「まねっこ?」
「うん、ぼくがね、したことをね、なまえちゃんが真似すんの!いい?!」
あはぁ、と大きな口を開けて笑う十四松さんにこくりと肯定の意で頷くと、にこにことわらってくれた。
「じゃ、はじめまーす!」
「はーい」
「お誕生日おめでとうー!」
「十四松さん、お誕生日おめでとうございます!」
「えへへ、ありがとー」
ちゅ、と頬に唇を寄せられたので、ちゅ、とほっぺにお返しのキスをする。
十四松さんは元気いっぱいで、パーソナルスペースが狭いらしくてよくくっついてくるけれど、こうやってキスしたりのスキンシップは多分、一番少ないとおもう。
「これなんか、うれしいけど、恥ずかしいっす」
てれてれと長い袖で顔を隠す十四松さんに胸がキュンとする。
なんていうか、ほかの人にはないピュアさというか。
それから十四松さんとずっとハグしたりごろごろしたり、朝ごはんを食べに行く時も真似っ子ゲームは続いて、また変なことやってる、と、ほかの5人に呆れたように笑われてしまった。
「なまえちゃん、すきだよー」
「十四松さん、すきですよ」
「わはー」
「ふふ」
「えーっと、なまえちゃんのね、やさしくて、かわいいとこ、すきだよ!」
「わたしも、十四松さんのやさしくてかわいいところ、すきですよ」
「あは、ありが盗塁王!!!ん、でもなまえちゃん、かわいいっていうより、美人かな!」
「ありがとうございます。十四松さんも、かわいいっていうより、格好いいですね」
にこにこ笑う十四松さんには悪気はないし、本気でそう思ってそうなところが照れる。
お互い頬を赤くしながら、何やってるんだろうねと笑い合う。
「ちゅーしていいっすか?!」
「わたしも、ちゅーしていいですか?」
ゆっくりと唇に向けられた視線にそっと目を閉じる。
十四松さんの息遣いがわかる距離で、いよいよ唇が重なる瞬間、唇のすぐ隣に柔らかな感覚。
「やっぱムリっす!!!」
顔を真っ赤にして、ぶんぶんと首をふる十四松さん。
くすくす笑って、私も同じところに唇を寄せる。
「なまえちゃん、照れないの?」
「照れてますよ、恥ずかしいです」
むー、と唇を尖らせた十四松さんが、うそだーと少し拗ねた顔をする。
ほっぺたをふにふに突っつけば、すぐににこにこ笑ってくれた。
「あんね、僕ね、なまえちゃんと会えてよかったなあって、おもってるよ」
「はい。わたしも、十四松さんに会えてよかったです」
にっこり笑って返すと、うーん、と微妙な反応。
「やっぱり、真似っ子ゲームやめやしょう。言わせてるみたいで、なんかイヤ!」
「……でも、ほんとに、そう思ってるんですよ」
最初こそ、早く帰りたいとか、まあ帰ったところでどうしようもないけど、だったら死んでしまいたいとか、いろいろ考えもしたんだけど。
だけど、今は、この人たちがわりと好きだから。
「もーすぐ時間、終わっちゃうね」
ちら、と時計を見れば、8時までもう数分。
「あは、一松兄さんもう、前で待ってるねえ」
「え、なんでわかるんですか?」
「うーんうーん、ぼくら六つ子だから、かなあ」
煮えきらない返事にはぁ、と曖昧に返事をすると、十四松さんが僕もわかんないや、と小さく笑う。
「じゃあもう終わっちゃうから、僕そろそろ、いかなきゃ」
「はい。十四松さん、おめでとうございます」
「ん、なまえちゃんありがとう」
ふわりと笑った十四松さんが、そっとわたしの背中に腕を回す。
ゆっくり離れた身体と、そっと近づいてくる顔。
「んっ」
十四松さんだから、と完全に油断していると、唇に感じる柔らかい感触。
「へへ、なまえちゃん、やっぱかわいいかも」
そう笑った十四松さんは、ぜんぜん、ピュアなんかじゃなかった。
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