ハロウィン(上)
「一気に六人相手すんの可哀想だから三人ずつにしたげるね!」
ま、まったくやさしくない。
ひくりと顔を引きつらせたわたしを無視して、一松さん以下三人はさっさとどこかへ行ってしまった。
「出番じゃないやつはオシゴトしてんの」
「は、はあ」
「お昼ご飯で交代って約束だよね」
「そーそー。だからあんま時間ないよ」
へらへら笑うおそ松さんは楽しそう。
私の腰に回した手をはやく退けてくれないかなあ。
「しかし本当に似合っているなあ」
感心したように顎に手を当てるカラ松さんは、まじまじと物珍しいものでも見るように私を見つめる。まあ物珍しいものなんだけど。
「かーらまつぅ。エロい目でなまえちゃん見んじゃないよ」
「それはおそ松だろ」
「えー?へへへ、バレた?だってすっげーえろいんだもーん」
するり、と太ももを撫であげられて、思わずビクリと肩を震わせる。
大げさに反応した私を見て、おそ松さんは意地が悪そうに笑う。
「えー?なにー?触っただけだよ?感じちゃっってェ!!!!あにすんだよチョロ松!!」
「セクハラ酷すぎるだろ。なまえちゃんに愛想尽かされるぞ」
「はぁー?お前ばっかり格好つけて。お前だってエロい目で見てんだろ?あ?」
チョロ松さんを挑発するようにスカートを捲りあげて、太ももをちらつかせる。
ちょ、見える!!!
「……やりすぎだ」
見かねたらしいカラ松さんが、おそ松さんにがっちりホールドされていた私を助けてくれた。神。
スカートをさっと直して、脱げかかったパンプスを履き直す。
「んだよー!つまんねー!これ分け方絶対間違えてるし!」
「後半ちょっと心配だけど十四松いるし大丈夫でしょ。一番ヤバイのおそ松兄さんだし」
「どーゆー意味!」
「そのままだろ」
「まじお前ら俺にだけ塩対応なのヤメテ」
ぎゃあぎゃあ騒ぎ合う三人は仲いいなあ。
よよよ、とわざとらしく泣きマネをするおそ松さんを、二人は冷ややかな目でスルーして、カラ松さんはゆるりとわたしの髪をなでた。
「何でも似合うだろうからなんでも良かったんだが、うん、かわいいな」
「は、はぁ」
カラ松さん、これで何も考えてないんだからタチが悪い。
なんの含みもない小さな微笑みを見せられてしまえば、頬を赤くして唸るしかないし。
「……カラ松口説くのやめて。……まあ、これおそ松兄さんと一松の希望なんだけどね。あいつら何考えてんだよ」
「いかがわしいことだろう」
「まあそうだね」
「ひ、ひえ」
「まあ、気をつけなよ」
仕事あるっつってんのにさぁ、と小さく呟く、心なしかグッタリしたチョロ松さんに肩を軽く叩かれる。
あぁ、苦労してるんだなぁ。
「黙って聞いてたら風評被害!まあエロいこと考えてんだけど!婦警さんってエロくね?捕獲凌辱みたいなー」
「クズか」
「今更だろ」
「塩対応!!!」
んだよー、と唇を尖らせたおそ松さんは心底つまらなさそうに眉を寄せる。
俺ボスなのに、と拗ねる姿はまあマフィアのボスには見えない。
「でもまあトリックオアトリートだからね。イタズラの一つくらいしとこうかな」
「っえ」
何でもないみたいに呟いたチョロ松さんが、つう、と首筋を撫でる。そのままかぷりと噛みつかれて、びくりと身体が震えた。
「……ん、まあこんなもんかな」
満足そうにぺろりと唇を舐めたチョロ松さんは色っぽい。
ぱちくり瞬きをする私に、今度はカラ松さんが反対側の首筋に唇を寄せた。
「痛っ」
「……まあ、吸血鬼だから、な」
……だからって本当に血滲むほど噛み付くのはどうかと思う。
すまん、と爽やかに笑う割に、全く罪悪感が感じられませんよ、カラ松さん。
「はあー?!?!お前らの方がよっぽどたちわるくねー?!さいあく!」
ふざけんな!と憤るおそ松さんが私の肩を掴んで、がっとシャツの胸元を開く。
み、みえる!
谷間にぐっと顔を近づけられて、そのままぴりっとした痛みが走る。
「……まあ、こんなもんか」
ちらりと見下ろせば真っ赤なあとがついていて、いっそ痛々しいほどだ。
これが首筋にもう2個ついてるんだよね……?
相変わらず意味のわからない人たちだなあとため息をつくと、にんまり笑ったおそ松さんに腰を抱かれた。
この人スキンシップ好きだな……。
「俺まだたりなーい」
ぺろり、と舌舐めずりをしたのは、おそ松さんだったか、それとも、視界の隅の2人だったか。
吸血鬼はカラ松さんだけじゃ、とか、そういうまともな意見というものは、この人たちにとってはなんの意味も持たないのだ。
するするとかさついた指先が肌を滑る感触に、ハロウィンなんて嫌いだ、と悪態をつきたくなったのは許してほしい。
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