ハロウィン(中)
文字通り身体中舐められて痕を付けられて、もう抵抗するのも面倒なほどぐったりと項垂れた私を見て、トド松さんがくすくす笑う。
すでにベッドにダイヴしたい気持ちいっぱいのわたしに待ち受けているのは、一松さんと十四松さんとトド松さんのイタズラである。
白旗を振って許されるものならとうの昔に降参しているけれど。
「あはは、疲れてる?」
「わー、すっげえ、首真っ赤だね!グロイ!」
「キスマークがイタズラとかえげつない事するよね……ヒヒ」
するすると指先で肌を撫でられて、ぞわりと擽ったくて身を捩る。
「……なまえチャン敏感だねェ」
「擽ったがりだもんねー……」
明らかに意図が含まれた手つきに、勘弁してくださいと涙がこぼれそうだ。
サワサワと優しく肌を撫でる指先は優しいけれども、際どいところを掠めるように動く彼らの意図は全く優しくない。
「でもなまえちゃん疲れてるからカワイソーだね」
眉を下げて笑う十四松さんがそっと2人から距離を置かせてくれて、黄色い背中にほっと息をつく。
楽しげな2人には悪いけれど、際どいセクハラは本当に今日は許してほしい。
「でもさァ、あの人らだけがあとつけてんのもムカつくんだよねェ?」
「……まあ、なまえちゃんは僕らみんなのものって約束だったもんねー」
「うーん……気持ちはわかるけど」
渋る十四松さんと、不機嫌そうな2人と。
わたしはびくびくと事の顛末を見守るだけです。
どうか穏やかな終着点を見ますように。
「じゃあ俺たちにキスマークつけてくださいよ」
一転してご機嫌な一松さんが、ゆるりと口角をあげる。
ぱちりと瞬きをする私に、一松さんは楽しげに笑った。
「俺たちもちょっとはつけたいけどぉ、そのエグイ大量のキスマーク前につけまくんのはさァ、ちょっとはカワイソーかなとか思うんだよね?だからァ、なまえサンも俺たちにつけていいですヨ」
ひひ、と笑う一松さんは頭がわいてるんじゃないだろうか。
眉を顰めたわたしに、一松さんは楽しくてたまらないという笑みを浮かべる。
「いいね、その顔。サイコー。見抜きいい?」
カチャカチャベルトを外そうとする一松さんに、あわてて助けをと止めるように十四松さんとトド松さんを見れば、2人は一松さんを制止して、それからんー、と考えるように首を傾げた。
「ま、いいよ。それで手を打ってあげる」
「なまえちゃんに印つけてもらえるの、ウレシーから、俺も賛成っす」
賛成しないで。
わたしの心の声は聞こえなかったらしく、ニヤニヤ笑った一松さんが近づいてくる。
「とりあえず俺も跡つけとこ」
柔らかい髪が首筋を撫でて、擽ったさに身をよじる。
ざらざらとした生温い感覚が首を撫でて、じゅるじゅる音がする。
一松さんほんと、変態っていうか、なんていうか!
「い、いちまつさ」
「ふひ、……ッはァ」
ずぞぞ、と背筋に悪寒が走る。
べろべろ無遠慮に舐めあげられた後、ちくりと痛みがして、ようやく解放してもらえる、と、思った、ら。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っだぁ?!」
思いっきりがぶりと噛みつかれて、思わず大きな声が漏れる。
え、ちょ、血でてるんじゃ?!
「ンァー、いいね」
「ウワ、えげつなぁ」
引き気味のトド松さんがちらりと見せてくれた鏡に写ったのは、真っ赤な跡がびっしり広がった私の首筋。
それから、跡の上からそれを隠すように、血が滲む歯形。
一松さん、歯がギザギザしてるから痛いってば!
「ん、じゃあ次僕」
トド松さんがするりと胸元のボタンを外して、まだ跡が付いていない鎖骨に噛み付く。
どさくさに紛れてまだ跡をつけてくる一松さんは痛いからやめてほしい。
「僕も1個だけ」
止めてくれるはずの十四松さんも、二人に毒されたのか、控えめに胸元に唇を寄せる。
もう何でもいいから早く終わってくれ。
「ん……んじゃ、次なまえちゃんの番ね」
「え」
「僕らに印、つけてくれるんだよね?」
「はい、じゃあ思い切りやっちゃって」
思い切り首筋をさらけ出して、一松さんが私の目の前にかがみ込む。
戸惑うわたしに拒否権などないらしく、しばらくして痺れを切らした一松さんが自分から肌を押し付けてきた。
渋々白い肌を吸い上げると、不機嫌そうな一松さんがチッと舌打ちをする。
「なめてんのか、本気でやって」
ドスの効いた声に泣きそうになりながら、ぢゅうう、とキスマークを付けると、一松さんが小さく息を漏らす。
「ん、いいぞ…………エグいくらい大量につけて」
言われるがまま何度も何度も肌を吸い上げて、ようやく満足したらしい一松さんがほうとため息をつく頃には、口が疲れていた。
薄々思ってたけどハロウィン関係ないし。
「んじゃ、最後思いっきり噛んで」
この人本当に変な性癖押し付けるのやめてくれないかな。
躊躇うように首を振れば、拒否権とかないよと不機嫌そうな声をあげられて、渋々首筋に歯を立てる。
「よえーよ。噛みちぎるくらいの強さで」
イライラした一松さんにダメだしされて、もうどうにでもなってしまえと全力で歯形をつけてやった。
首筋から血を流した一松さんは、頬を赤く染めて、ハァハァ息を繰り返す。
「ウ、やればできんじゃん、やば、出た」
何が出たのかは聞かないし知りたくないなあ。
もう本当に疲れたから解放してほしい。
泣きそうな私の肩を、トド松さんがぽん、と叩く。
「僕、一松兄さんほどたくさんじゃなくて、いいよ!」
「僕もそんな多くなくていいよー!」
勘弁してください。
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